「二級建築士試験を受けたいけれど、どんな試験かわからない」という方向けに、二級建築士試験とは何か? ということをご説明します。
できるだけ、試験を知らない方にもわかっていただけるように書きました。
「そんなの知ってるよ!」という項目があっても、そこは読み飛ばしてくださいませ。
建築士とは?
日本には、様々な建築物があります。
一般戸建住宅、マンション、ビル、ショッピングセンター。
野球ドームや、体育館など。
※画像は、東京ドーム(Wikipediaより/J-phopho)
これらの建築物を『設計』するのが、建築士のお仕事です。
もちろん、設計だけではありません。
建物が設計書通りに工事されているのかのチェックや、あるいは、既存の建築物が適法か否かのチェックも、大切なお仕事です。
二級建築士と一級建築士の違いは?
『取り扱える建築物の規模』が違います。
一級建築士には制限がありません。
対して、二級建築士には制限があります。
主に戸建住宅を取り扱うのが二級建築士です。大規模な建築物は取り扱えません。
一般的には、二級建築士取得後、実務経験を重ねて一級建築士へステップアップします。
ですので、まずは二級建築士に合格することを目標にトライすることになります。
二級建築士と一級建築士の業務範囲の違い
具体的な業務範囲をご紹介します。
公益財団法人 建築技術教育普及センターより抜粋:
http://www.jaeic.or.jp/shiken/1k2kmk/type_of_architects.html
二級建築士 試験日程
- 4月中旬:申込み(面接)
- 7月:学科試験
- 9月:製図試験
- 12月:合格発表
ポイントは、7月の学科試験終了から9月の製図試験まで、ほとんど期間が空いていない事ですね。
学科合格後、わずか2ヶ月で製図試験へ挑むことになります。
二級建築士 受験資格
勘違いしやすいのですが、「学校に行かないと受験資格が与えられない」わけでは、ありません。
7年以上の実務経験があれば、学校にいかなくても受験資格が与えられます。
具体的な受験資格は以下のとおりです。
公益財団法人 建築技術教育普及センターより抜粋:
http://www.jaeic.or.jp/shiken/2k/exam-qualifi-2kmk/index.html
二級建築士試験における、『実務経験』とは?
実務経験とは、「建設業の許可を受けた会社での実務経験」に限定されません。
とにかく、条件に合致する経験があればよいです。
例えば、
工務店で7年間、建築設備の設置工事の、技術上の管理に関する業務を行った
という場合は、実務経験として認められます。
【実務要件一覧】
平成20年11月28日以降の実務経験要件 「建築実務の経験」として認められるもの ◎設計・工事監理に必要な知識・能力を得られる実務
(1)建築物の設計(建築士法第21条に規定する設計をいう。)に関する実務
(2)建築物の工事監理に関する実務
(3)建築工事の指導監督に関する実務
(4)次に掲げる工事の施工の技術上の管理に関する実務
イ 建築一式工事(建設業法別表第一に掲げる建築一式工事をいう。)
ロ 大工工事(建設業法別表第一に掲げる大工工事をいう。)
ハ 建築設備(建築基準法第2条第三号に規定する建築設備をいう。)の設置工事
(5)建築基準法第18条の3第1項に規定する確認審査等に関する実務
(6)消防長又は消防署長が建築基準法第93条第1項の規定によって同意を求められた場合に行う審査に関する実務
(7)建築物の耐震診断(建築物の耐震改修の促進に関する法律第2条第1項に規定する耐震診断をいう。)に関する実務
(8)大学院の課程(建築に関するものに限る。)において、建築物の設計又は工事監理に係る実践的な能力を培うことを目的として建築士事務所等で行う実務実習(インターンシップ)及びインターンシップに関連して必要となる科目の単位を所定の単位数(30単位以上又は15単位以上)修得した場合に実務の経験とみなされる2年又は1年の実務
※1 建築士等の補助として当該実務に携わるものを含む。
※2「建築実務の経験」には、単なる写図工若しくは労務者としての経験又は単なる庶務、会計その他これらに類する事務に関する経験は含まない。一部が「建築実務の経験」として認められるもの 一部の期間「建築実務の経験」と認められない業務を含んでいる場合
(認められない業務の期間を除いた期間とする。)「建築実務の経験」として認められないもの 「建築実務の経験」として認められるもの以外の業務
(1)単なる建築労務者としての実務(土工、設計事務所で写図のみに従事していた場合等)
(2)昼間の学校在学期間(中退者の在学期間を含む。)公益財団法人 建築技術教育普及センターより抜粋:http://www.jaeic.or.jp/shiken/1k2kmk/work-experience.html
営業経験は実務として認められない
昔は営業でもよかったらしいのですが、今は、『営業』では実務経験としては認められません。ご注意。
業務の全部が建築実務ではなくてもOK
例えば、1日8時間勤務の内、『4時間は現場、4時間は営業』をしていたとします。
その場合、4時間を実務経験として計算します。
なので、7年間の実務経験を満たすためには、14年間の実務が必要、ということです。
実務経験に該当するか否かの判断は、建築士が行う
「何の業務が実務経験に該当するのか」これは、建築士が判断します。
ここでいう建築士とは、「勤務先の代表の建築士(管理建築士)」です。何か、特別な調査機関があるわけではありません。
建築士が該当するか否かを判断し、署名のうえ、実務経験を証明する事になります。
一般的には、お勤め先の会社の上司が署名します。
実務経験は、建築士の署名だけで証明され、通常はそれ以上は調べられません。
嘘をついて受験させた結果、不正が発覚して免許を取り上げられた者もいます。
申請の際は面接あり
受験申請をする際は面接があります。
面接といってもたいそうなものではなく、建築士が証明した経歴書におかしなところがなければ、すぐ終わります。
なお、どうしても署名してくれる方が首位にいない場合は、署名なしでも申請可能です。その場合は、面接官からかなり詳しく聞かれるようです。
もちろん、嘘をついていなければ何も気に病むことはありません、堂々と申請すればよいでしょう。
私の場合は、「どんな仕事ですか?」と一言だけ聞かれたくらいで、面接は1分もかかりませんでした。
二級建築士の試験内容
試験は、「学科試験」と「製図試験」にわかれます。
学科試験の合格者のみが、製図試験を受けることになります。
二級建築士 学科試験
5肢択一、マークシート方式です。
学科試験は、4種類にわかれます。
『計画、施工、法規、構造』です。
それぞれ25点満点の、合計100点満点。
合格基準は、
- 1科目13点以上
- 4科目の合計点数が60点以上
この2つの条件をクリアする必要があります。
戦略的には、全科目15点以上を目指す事になりますね。
受験当日の時間配分
「二つの科目を同時に」受けます。
具体的には、
- 『計画と法規を一緒に受けて』で3時間。
- 『構造と施工を一緒に受けて』で3時間。
という構成で受験します。(この組み合わせは変えられません)
問題用紙は、二つ一緒に渡されます。
時間配分の指定はありません。
例えば、『計画に1時間、法規に2時間』、というペース配分でもOK。
法規から解いてもいいですし、計画から解いてもいいです。
ここは、実際の過去問をご覧になったほうがわかりやすいと思います。
↓でご確認を。
http://www.jaeic.or.jp/shiken/2k/2k-mondai.html
二級建築士 製図試験
学科試験をクリアすると、次は製図試験です。
学科試験合格後、2年間は学科を受けずに製図試験を受けられます。
つまり、学科を合格した年に1回、翌年に1回、そのさらに次に1回。
1回筆記に合格すると、合計3回は製図試験を受けられます。
製図試験では、一般住宅の設計を行う
製図試験では、『一般住宅の設計』をします。
毎年、予めテーマが与えられていて、それに沿った条件で設計を行います。
RC設計と木造設計のどちらかが出題されます。
3年サイクルで、
- 木造→木造→RC
- 木造→木造→RC
と、順番に出題されています。
平成28年、29年は木造でしたので、平成30年はRCが予想されています。
予想通り、平成30はRCでしたね~。
木造設計の特徴
- 梁や火打やと、書かないといけない線が多い!
- RCと比較して構造が複雑
→むつかしい!!!
その反面、落ちてしまっても2回は木造を受験することができます。
RC設計の特徴
- 梁も火打もない!!
- 木造と比較して、構造が単純
→かきやすい!!!
その反面、1回落ちると翌年は木造です。
また最初から勉強し直しなのでつらいです。
木造・RCどちらのほうが合格しやすい?
合格率的には、毎年同じ(53%前後)です。
なぜなら、試験は相対評価だからです。
周囲の出来が悪い場合、その分、合格点も下がります。
逆に、よければ合格点が上がります。
ましてや、問題を選択することができるものでもないですし、与えられた問題を愚直に練習するしかないとは思います。
あえて言うなら、ご自身が実務で取り扱っているほうがとっつきやすいと思いますよ。構造のイメージがしやすいですから。
製図試験の出題のされ方
問題は、文章で出題されます。
「●●の条件で、家を設計してください」
というイメージです。
文章では理解しづらいですね、過去問を貼り付けておきます。
平成29年度の問題です。
「家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅(木造2階建て)」
という大きなテーマに対して、文章で以下のような問題が出題されます。
(※クリックで大きくなるので、気になる方は拡大してください)
で、上記の文章をもとに、以下のような図面を書き上げます。
雰囲気は伝わるかな~?
何が何だかわからないように見えるかもしれません。
実際、最初はそのとおりです。
しかし、基本、「与えられた条件に従って組み上げるパズル」です。
プランニングしたときの留意点を、筆記形式で書く場所もありますが、さほど難しくありません。
例えば、「3世代住宅を設計するにあたり、家の中心にリビングを設けたことで、家族団らんの場となるよう配慮した」とか、そんな小学生の作文レベルでOKです。回答例もだいたいそんなカンジです。
二級建築士 試験難易度
難しい試験に分類されるのは間違いないですが、十分、独学で狙えるレベルです。
私の経験から、感じたことをそのまま記録しておきます。
学科試験の難易度
範囲がめちゃくちゃ広いので、勉強は大変でした。
ただ、問題そのものは難しくありませんでした。
ひっかけ問題がほとんどありません、知識を問う素直な問題ばかりです。
過去問がそのまま出題されたりするのも特徴的でしたね。
問題の深掘りもされません。
総じて、「出題範囲が広いだけ」の試験に感じました。
一つ一つの問題の難しさなら、多くの方は「宅建のほうが難しい」と感じるのではないでしょうか。
足きりは、13点/25点です。4割を間違えてもOKな計算です。
これは、かなりアバウトな知識でも大丈夫ってことです。
エンピツ転がしても2割は正解しますから。
筆記試験の合格率は30%~40%程度。
決して楽観視してはいけないものの、この合格率は、他の試験と比較しても”かなり高め”です。
製図試験の難易度
めちゃくちゃ手こずりました。
ただ、基本、覚えゲー。覚えることはおおいですが、パターンなので、慣れれば問題ありません。
最大の壁は、『筆記試験が終わったあとの2ヶ月で仕上げることができるか否か』という、時間との戦いだと思います。7月の筆記試験が終われば、休んでいる時間はありません。すぐ勉強をはじめてください!!
合格率は53%程度と、かなり高め。『出来の良い、素晴らしい図面をかきあげた者が合格する』試験ではありません。『ミスさえなければ合格する』試験だと思ってよいです。
製図試験については、独学では少しとっつきにくい部分もあります。しかし、私は独学でも合格可能だと感じました。
なぜなら、私は試験学校に行った結果、教師は不要と感じたからです。試験学校でも、結局、独学と同じように、テキストを開いて一つずつ図面を描いていきましたし、それで十分合格できたからです。
確かに教師がいることの安心感はありますし、多少、直接聞けて楽になったのはありましたが・・・。
試験前になると、ネットや、資格学校で、「1日だけの添削」をやっています。
そちらに応募するくらいで十分では? と、思いました。
「製図試験にクリアした”から”家の設計ができる」と思わない方がいいです。
試験のための製図です。
めちゃくちゃな家が出来上がっていることも多いですから。
ただし、やはり、製図はとっつきにくさはすごくあると思います。
「なにからやればいいかわからない」、と。
学校に行くのも決断です。
ご自身の貴重な時間は、ご自身の決断によって利用してください。
詳しい勉強方法は、以下に書きましたので、こちらでご確認ください!