『管理業務主任者』という資格は、マンション管理会社の業務遂行に必要な国家資格です。
マンション管理事業を専門に扱う職業である『フロント』にとっては運転免許証のようなもので、この資格を持っていなければ一人前として認められません。
管理業務主任者試験データ
試験データ
- 4問択一式のマークシート方式
- 問題数 50問
- マンション管理士合格者は、5問免除(5問を正解したとみなされる)
受験資格
特になし。
学齢・性別・年齢を問わず受験可能。
受験手数料
8,900円
試験スケジュール
- 申込期間:例年9月頃
- 試験実施:例年12月初旬
- 合格発表:例年1月ごろ
試験内容
- 管理事務の委託契約に関すること
- 管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納に関すること
- 建物及び附属施設の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関すること
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること
- 前各号に掲げるもののほか、管理事務の実施に関すること
試験実施機関
一般社団法人マンション管理業協会
〒105-0001
東京都港区虎ノ門1-13-3虎ノ門東洋共同ビル2階
電話番号:03-3500-2720
必要な勉強時間
一般的には、300時間~500時間程度、と言われています。
民法の基礎的な知識がある方(例えば、宅建合格者)であれば、100時間~200時間程度での合格は十分に可能です。
合格に必要な点数と合格率
50点中、32点~37点程度が合格点。
合格率は、毎年21%程度。
合格率は毎年、それほど変わりません。
平均点にあわせて、合格率が21%程度となるように試験元が合格ラインを設定していると思われます。
試験は難しくなっている?
試験が始まって約20年。
試験対策のための市販テキストも充実し、受験生のレベルが上がる中で、合格率・合格点数は一定程度を維持しなければなりません。
問題は少しずつ難しくなっています。
特に、今までは「4択で間違っているものを選べ」という問題がほとんどだったのに対し、近年は「4択のうち、間違っているものはいくつあるか」という、より深い理解度が求められる出題形式が増えています。
難化傾向にある原因について。
私見ですが。
- マンション管理会社の従業員は必ず受験しなければならず、自然と受験生に実務者が増加し、質が底上げされている
- 管理業務主任者資格には宅建のような社会的ステータスがなく、『興味本位で受験してみる』人が減った
という理由ではないか、と思っています。
本当に資格が必要で、よく勉強している人の受験割合が増えた中でも、合格者は2割に絞らないといけないので、結果として難しくする方向で調整しているのかな、と。
受験者数も毎年減ってますしね。
今後、マンションが爆発的に増加する社会的な環境は訪れないでしょうから、管理業務主任者の需要も安定しているでしょう。
裏を返せば、需要が大きく増加するタイミングはもう訪れない、ということです。
興味本位の記念受験層がいなくなり、受験生の平均的な質が上がれば上がるほどに上位のレベルはあがっていきます。
『一定のレベルの技術があれば何人でも合格させる』という試験ではなく、『上位20%を合格させる』試験ですから、難易度は、今後もごくごく緩やかに難しくなっていくのではないか、と予想しています。
何をする仕事か?(管理業務主任者の独占業務)
管理業務主任者にしかできない業務(独占業務)は、次の3つです。
- 委託契約に関する重要事項説明および重要事項説明書(72条書面)への記名押印
- 管理委託契約書(73条書面)への記名押印
- 管理事務の報告(77条)
委託契約に関する重要事項説明および重要事項説明書(72条書面)への記名押印
分譲マンションは、その所有者全員で『管理組合』という団体を組織します。
マンションは、『管理組合』での話し合いによって、「マンションをどのように維持・運営してゆくか」を決めてゆくことが、法令(区分所有法)によって定められています。
しかし、分譲マンションを購入するのは、一般の方、つまり素人さんです。
マンション管理には多くの専門知識・経験・技術が必要です。そのため、多くの場合は、運営サポートをマンション管理会社へ業務委託しています。
その契約を、『委託契約』と呼んでいます。
この『委託契約』を契約するには、法律で定められた手順を踏まなければなりません。
それが、管理業務主任者にしか行えない、『重要事項説明書の作成(記名・捺印)』と、『重要事項の説明』です。
※1 72条書面とは
『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』の第72条において、重要事項の説明が定められている。
それに基づいた書面なので、『72条書面』と呼ばれている。
管理委託契約書(73条書面)への記名押印
前項の『重要事項説明』を経て、晴れてお互い納得の上で管理業務を契約する際は、契約書を交わします。
その際も、契約内容が間違いないかのチェックを管理業務主任者が行い、記名押印を行います。
これも、独占業務で、管理業務主任者以外にはできません。
管理事務の報告(77条)
前項で契約した『管理業務』をマンション管理会社は行います。
そして、業務の結果を、管理組合に報告する義務があります。
この報告が独占業務で、管理業務主任者以外にはできません。
管理業務主任者の独占業務は、マンション管理会社の日常業務
管理業務主任者の独占業務は定型的な日常業務です。
管理業務主任者資格を持っている人間がエライ、というわけではなく、そもそも持っていなければ仕事にならない(半人前)、という認識がより正確です。
ですから、マンション管理会社に勤務し、『フロント』という職業に就くのであれば、取得は必須となる資格です。
管理業務主任者の需要
世の中の分譲マンションは、毎年、2%くらいの増加傾向にあります。
新築マンションはどんどん建設される一方で、古いマンションがすぐに建て替えられるわけではないからです。
コンクリートの耐用年数が非常に長いこと(50年以上)が大きな原因です。
分譲マンションが2%増える、ということは、マンション管理会社の仕事の総量も毎年2%増えている、ということ。
マンション管理会社の仕事は、世の中に分譲マンションが存在する限りなくならないでしょし、今後も、マンションが新築されるたびに、管理業務主任者の需要は増加し続けます。
将来、住宅が十分に供給された段階で、マンションの増加は伸び悩むことがあるはずです。永遠に市場が成長し続けるというわけではないでしょうが、いまのところ、需要は成長し続けています。
管理業務主任者の独立開業
管理業務主任者は、『会社員に必要な資格』であり、この資格単体での独立開業は現実的ではありません。
資格を利用した独立開業は、かなり難しいと考えられます。
しかし、管理業務主任者としての業務経験を活かして、『マンション管理士』としての独立は考えられないことではありません。
独立開業を行うのであれば、マンション管理士の資格も受験し、実務経験をつむ等の準備を行うことになります。
現実的には、マンション管理士という職業の認知度は高くはなく、マンション管理士としての独立は容易ではないのですが・・・。
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