宅配ボックス

宅配ボックスを新規に導入するメリット・デメリット【分譲マンション編】

宅配ボックスとは、マンションの1階(たいていはポストの近く)に設置されている、「荷物受け取り用のロッカー」のことです。

宅配業者が宅配ボックスに荷物を預け入れることで、荷物の受け取り主は業者と顔を合わせることなく24時間いつでも荷物を受け取ることができます。

ボックスのサイズは様々あります。郵便ポストと違い大きなダンボールでも不在時に受け取ることができます。最大、ゴルフバックサイズまで対応している製品もあります。

「住戸分の専用ロッカーが用意されている」わけではなく、「ロッカーは共有で利用」します。

宅配ボックスは、宅配ロッカーとも呼ばれています。(以下、ここでの呼び名は宅配ボックスに統一しますが、同じものだと認識してもらってOKです)

この写真は、フルタイムシステム社製の宅配ボックス。

宅配ボックスの使い方は?

  1. 宅配業者が、住戸番号を指定して、ボックスに荷物を預け入れる。
  2. 宅配業者が、荷物受け取り者のポストに「荷物を預けた」旨の通知を投函する
  3. 荷物受け取り者は、帰宅後、ポストの通知を見て、宅配ボックスから荷物を取り出す(インターホンに表示されるタイプの設備もあります)

戸建て用の場合は、マンション用と違って、(値段的にも、仕組み的にも)簡易なものが販売されてますね。数万円で購入できるものもあります。

宅配ボックスのロック解除方法は3種類

ロック解除方法(取り出し方法)は大まかに3種類あります。

  1. あらかじめ設定された暗証番号で解除する
  2. カード(もしくは非接触キー)で解除する
  3. 宅配業者がその都度設定する

あらかじめ設定された暗証番号で解除する

住戸ごとに、住戸専用の暗証番号が割り当てられています。暗証番号は、もちろん変更が可能です。

宅配業者は、宅配ボックスに荷物を預けるだけです。(暗証番号の設定は行いません)

受け取り主は、専用の暗証番号を用いて、ロックを解除します。

カード(もしくは非接触キー)で解除する

専用のカード(もしくは非接触キー)が、各住戸に割り当てられます。

そのカードでしか開かないので、暗証番号と違って、セキュリティは高め。

その代わり、カードは発行に1枚数千円の費用が必要になるので、導入の初期費用としては暗証番号より割高です。それに、紛失したときにはカードの再発行手続きも必要になるので、少々手間+費用がかかりますね。

追加発行して、家族が1枚ずつ持つこともできます。

宅配業者がその都度設定する

宅配業者が、暗証番号を設定して、その暗証番号を配達先住戸へ案内します。

配達先住戸(受け取り主)は、通知を見て、設定された暗証番号で荷物を取り出します。

暗証番号が漏れるのはこのタイプですね。ポストから通知を抜き取って、荷物を盗むようです。

世の中で発生する「宅配ボックスのトラブル」はこのパターンが多いのではないか、と思っているのですが、私個人としてはこのタイプが設置されたマンションを知らないので正直よくわからないです。

管理者としては、「暗証番号を設定する手間がない」ことがメリットとなるので、人の入れ替わりの激しい賃貸向きかな、と思います。

住人から見た宅配ボックスのメリット・デメリット

住人目線でのメリットです。

宅配ボックスのあるメリット

  • 不在中に荷物を受け取れる
  • 顔を合わせずに荷物を受け取れる(居留守が使える)
  • 再配達を依頼する手間・指定時間に在宅しなければらなない手間の軽減

要するに、「不在であっても荷物を受け取れます」という設備なので、スマホを使う世代なら必須!というのはもちろんなのですが。

世の一般の男性があまりピンとこない使い方があります。それが、「居留守がつかえる」というもの。

特に、女性の場合、誰にも会いたくないときってありませんか?

化粧や服が整っていないと、外に出たくないですよね?

それだけではなくて、防犯の心配もあります。

宅配業者さんは、夜中に来てくれることもあるので、一人でいるときは心配じゃないですか?(宅配業者を装った不審者トラブルもありましたしね)

宅配ボックスがあれば、居留守を使ってもいいですし、インターホン越しに「宅配ボックスに入れといて」でもいいですし。これってすごい便利ですよ。女性こそ欲しいだろうなー、と思う設備です。

旦那さんも安心できますよね~。

宅配ボックスのあるデメリット

  • 重い荷物の場合、1階から持って上がるのは大変
  • 費用がかかる

宅配ボックスは1階にあるので、受け取った荷物は自宅までもってあがらないといけないです。

「宅配ボックス導入反対派」からよく聞く意見ですね。「手間が増える」と。

ネットで重たいもの(飲み物やコピー用紙)を買う場合は、少し注意が必要。「宅配ボックス利用不可オプション」を設定している配達業者もありますね。

それと、宅配ボックスを設置するにも費用がかかります。賃貸入居などで直接は設備費用を払っていなかったとしても、それは家賃として間接的に支払うことになっていますから、やはりいくらかは割高になっているはずです。(無視できる程度の、ごく少量でしょうけどね)

管理者からみた、宅配ボックスのメリット・デメリット

管理者視点です。上記とごっちゃにすると少しわかりにくいかな、と思ったので別の項にしました。

ちなみに、管理者、というのは管理会社ではありません。賃貸オーナーや、管理組合を想定しています。

宅配ボックスのあるメリット

  • マンションの資産価値の増加
  • 入居者満足度の向上(連動し、空き家率ダウン)

賃貸物件を探すWEBサービスに「宅配ボックスの有無オプション」がありますからね、それで引っかかるユーザーもいますよ。オーナーさんはぜひ設置の検討を。

余談ですが、管理会社から見たメリットは特にありません。管理会社はこれを使わないのでw

宅配ボックスのあるデメリット

  • 清掃する人に、清掃方法の教育が必要
  • 設備のチェック箇所が増える
  • 住人へ、使い方の教育が必要(窓口コストの増加)
  • 荷物の紛失・入れ間違い等による、トラブル対応が発生する(窓口コストの増加)
  • 費用がかかる(導入コスト、メンテナンスコストともに)

基本的には、あらゆる意味でコストの増加がデメリットです。

特に、人件費の増加は顕著です。

のですが、このあたりのコスト増は、多くの場合、管理会社なり不動産仲介会社なりがかぶることになるので、あまり管理者にとってのコストの増加にはならないかもしれませんね。

管理会社(特に現場担当者)としては、単純に「仕事が増える」話ですね。

管理会社のフロントさんへ

荷物の紛失・入れ間違い等による、トラブル対応が発生する(窓口コストの増加)について。

これは管理会社担当者あるあるとして、「めんどくさい」部類に入る話ですよね。ちなみに、割と私は緊急対応をお断りしてるのであんまり手間には感じてないです。もちろん宅配ボックスがない組合と比較すると手間は増えてはいるのですが。

業者から「入れ間違えた」という連絡があれば「入れ間違えた先の住戸に声かけてもらえませんか」もしくは「緊急対応費いただきますが大丈夫ですか」で、乗り切っています。(費用が必要といえば、向こうから断ってきます)

あとは、管理員に指示だして現場対応で完了(管理員が出勤する日まで待ってもらう)というケースもありますね。

故障の場合は業者に全投げするので、そもそも現場に行くこともなかったりします。(現場で対応する管理員の信頼度にもよるんですけどね~。壊れてないけど知識不足で壊れたと判断してるケースも往々にしてあるので)

あと、可能な限り、組合には管理委託契約(メンテナンス契約)に加入してもらいましょう。これがあるとないのとでは手間がまったく違うので。(ネットに接続しないスタンドアローンタイプでも、遠隔で1度きりの暗証番号を発行できたりするみたいです)

契約上、組合が管理委託契約に加入していないなら、管理会社の緊急対応費は全額組合なり当事者なりに請求すべきですよ。(会社の方針にもよりますし、私は請求したことありませんが、「基本はそうあるべき」という認識は持っておくとよいです)

顧客から直接連絡があった場合は悩みどころで、全く緊急で対応しないこともないのですが、、、w

宅配ボックス導入の際の注意点

思いつく一般的な注意点は上げておきます。詳しくは導入会社さんに聞いてください。

景観が変化すること

宅配ボックスは、それなりに大きい(一番小さくても家庭用冷蔵庫くらいのサイズ)です。

新築の場合は、マンションに宅配ボックスを設置するつもり設計するので、あまり気にする必要はありません。壁の中に埋まっているケースも多く、美観もよろしいです。

が、既築マンションの場合はそうはいかないです。

通常はポストとインターホンの近くに設置することになるのですが、適した位置があるかどうかが大きなポイントになります。

なければ、屋外に屋根を増設して設置するとか、いろいろ考えることになります。ただ、屋根を付けるには建築基準法の制限を受けたり、そもそも費用がめちゃくちゃ掛かったりと、いろいろとややこしいです。

宅配ボックスが通路をふさぐこと

車いすとか、大丈夫ですか?

開閉は通行の邪魔になりませんか?

業者はもちろん設置したいので営業成績にために無理なところでも提案してきたりします。よく現地を見ときましょう。

ボックスの数に注意

業者は、全住戸数の10%~20%で提案してくることが多いです。

ボックス数が無駄に多くてもコストがかかるだけですが、小さいと「宅配ボックスがいっぱいで入れられない」というトラブルが考えられます。ここは熟考の必要があります。

なお、適正な数は、住民の年代によって調整の必要があります。

若い世代(30歳~40歳)が多いと、明らかに宅配ボックスの稼働率が上がっています。

逆に、50歳以上がメインのマンションだと稼働率は低いです。(体感で倍程度は違います)

今後、メインの住民層の世代がスライドしていく(とともに、ネット通販の販路が拡大する)につれ、どんどん稼働率が上がることが予想されます。

電源が必要なので注意

100ボルトの電源が必要ですので、電気工事が必要です。ただ、これは電気の線を1本引くだけなので、通常、あまり大きな問題にはなりません。(どうとでもなります)

電気を使うので、停電があれば使えなくなるので、注意。

なお、一部の機種は電源不要です。

よくある質問など

長期不在の場合はどうすればよいか

「荷物を受け取らないモード」があります。

自分で操作が可能なので、自分の部屋は「荷物を受け取らないモード」モードにして、帰宅後は解除してください。(※一部、できない機種あり)

宅配ボックスを使いたくないがどうすればいいか

上記、「荷物を受け取らないモード」に設定しておくと良いです。

宅配ボックスに荷物が預けられなくなります。(※一部、できない機種あり)

荷物を取り忘れている場合は教えてもらえますか

宅配ボックスへ荷物の配達が完了したがポストに通知が投かんされていない場合は、ご自身で宅配ボックスを確認する必要があります。(機械にはその旨が表示されていますので見ればわかります ※一部、対応していない機種あり)

なお、一定期間(設定によりますが、通常は3日程度)荷物を受け取っていない場合は、宅配ボックスの液晶表示が変化して、長期受け取りがされていないことがわかるようになっています。(※一部、対応していない機種あり)

管理員がそれに気づけば教えてくれるはずです。

気が付かない(あるいは管理員が派遣されていない)場合は、やはりご自身で確認するしかありません。

配送業者が提供するWEBでの配達確認サービスを見ていればわかるとは思いますが、どうでしょう。

なお、実務的に、「荷物を取り忘れて困った」、というケースはあまり聞かないですね。皆さんうまく付き合えているようです。

生鮮食品は入れてよいか

通常のボックスではダメです。生鮮食品がOKな専用ボックスもあるので、導入時点でそういったものを採用してください。

そうではない場合、ネットの食品配達サービス(らでぃっしゅぼーやなど)で宅配ボックスを利用していると、それはルール違反です。補償を求められる可能性がありますので注意。(※宅配業者もわかってるので通常は入れたりしないんですが、地域の中小業者だとイケイケで使ってたりするので要注意)

設備によっては、冷蔵可能タイプもありますので、クール便が受け取れるボックスも存在します。

荷物に重量制限はありますか

ありますね。たしか30キロくらいだったと思います。

実際の制限は設備によって違うと思うので、詳細はカタログ等で確認してください。

付帯サービスはあるか

  • クリーニングの受け取りサービス
  • 電気自転車のカギ・充電器の受け渡しサービス
  • 電気自動車のカギ受け渡しサービス
  • AED収納

など、各社付帯サービスを取り扱っています。詳細は導入業者へご相談を。

友人との荷物の受け渡しに利用してもかまいませんか

管理者の判断によります。

機能としては利用できますが、そういったイレギュラーな使い方をする人が増えれば、ボックスがいっぱいになってしまう可能性がありますので。

荷物が盗まれた場合はどうなりますか

まずは配達業者に相談することが第一ですが、一度、管理者にもご相談してみると何かいい知恵があるかもしれません。(保険や、補償があるかもしれません)

ただ、盗まれて困るような貴重品は預けるべきではない、と考えたほうがいいですね。盗まれる可能性はゼロではないからです。仮に金銭的な解決があったとしても、盗まれた荷物は戻ってきません。

インターホンとの接続は可能ですか

新築マンションだと、宅配ボックスに荷物が届けられた旨がインターホンに表示されるシステムを組んでいるケースがあります。

これを既築マンションでできないか、という話。

可能です。

が、思いのほか高いです。(配線費用+宅配ボックスグレードアップ費用でそこそこかかる)

詳細は導入業者と相談を。

おまけ:宅配ボックスの取扱業者

マンションに宅配ボックスを導入している会社を紹介しておきます。

私の知識不足で、記載していない会社もまだあるかな、と思いますので、そこはそのつもりでお願いします。備考欄も私の所感です、間違いがあれば教えてくれたらうれしいです。

株式会社フルタイムシステム

設立:1986年5月(昭和61年)

資本金:4億9800万円

HP:http://www.fts.co.jp/

備考等

宅配ボックスのことを、「宅配ロッカー」と呼んでいるようです。

「世界で最初に宅配ボックスを販売した」とのことで、「パイオニア感」をすごく押し出しています。ただ、サービス的にもおそらくもっとも充実している印象がありますので、それに違和感はないです。

業界シェア1位、とのこと。

ネットワーク接続タイプの宅配ボックスを取り扱ってるのは(多分)この会社だけです。

あと、(わりとどうでもいい話ですが)営業マンが営業力強めです。グイグイくる。

日本宅配システム株式會社

設立:平成5年4月12日

資本金:7,000万円

HP:http://www.j-d-sys.com/

備考等

宅配ボックスのことを、「コンシェルジュボックス」と呼んでいるようです。

いい意味で、あまり特徴のない会社、ってイメージです。

あ、確か、去年(2017年)に、防滴性能のある完全屋外対応ボックスを発売していましたね。他社ではみたことないのでここだけかもしれません。

株式会社東精ボックス

設立:平成13年9月1日

資本金:10,000,000円

HP:http://www.toseibox.com/

備考等

株式会社東京精密の子会社。

宅配ボックス本体としての機能には特に問題ありませんが、「他社にできてできない」ことがチラホラ。(遠隔解錠や、電気自動車の充電サービスなど。できるのかな??ホームページには掲載していませんでした)

あまり付帯サービス面には力を入れていない印象。

田島メタルワーク株式会社

設立:1963年4月1日

資本金:100百万円

HP:http://www.metalwork.co.jp/

備考等

鍵やポストを作ってることで有名な会社、が、作ってる宅配ボックス。

暗証番号を、「預け入れのたびに新しい暗証番号を宅配業者が都度設定する」タイプの製品を販売してる、(たぶん)唯一の会社。

また、奥行きの狭い(28センチ)タイプのラインナップがあります。(他社は、60センチ~小さくても45センチくらいです)

そういう理由で、賃貸には良さそうかな~。私は取り扱ったことないです。

おわり

使わない方にとっては無駄と映るようで、分譲マンションで宅配ボックスを新規導入しようという話になると、だいたい「賛成半分、反対半分」くらいに分かれます。アンケートなんてとると意見が分かれて泥沼なので、あんまりアンケートはお勧めしません。

ちなみに、「反対派」は、「必要と感じていない」「そもそもなんのことかよくわかっていない」という意見が多いイメージです。

確かに、それなりに導入費用のかかる設備ではあります。が、マンション全体で利用すると考えた場合、費用の割には満足度は高いのかな、と私は思います。

きちんと説明すれば、納得・理解して賛成に回る人も増えると思いますよ~。

ABOUT ME
はじめちゃん!
はじめちゃん!
分譲マンションを管理する会社に勤めています。 資格:管理業務主任者/マンション管理士/宅地建物取引主任士/マンション維持修繕技術者/二級電気工事士/2級建設業経理士/二級建築士/1級船舶免許

POSTED COMMENT

  1. アバター 器用人 より:

     宅配ボックスはありますが、使った事はありません。
     荷物が届くと住戸のインターホンに表示が出ることも知りませんでした。 メーカーは日本宅配システム株式會社です。
    取扱説明書には「ベンリーポスト®」と書いてあります。

  2. >荷物が届くと住戸のインターホンに表示が出ることも知りませんでした。

    あ、設備状況で、できるできないはありますよ~~~!
    ネット通販をしないと、あまり使う機会はないかもしれないですね!

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