本年度も最低賃金が改定されます。
政府は、目標を「年3%ずつ引き上げを行い、平均で1000円を目指す」としています。
今後も、順調に最低賃金は上がっていくものと思います。
目次
雇用コストの増大
さて、そうなると、「最低賃金くらいで働く方々」の給与は、連動して年3%くらい上昇するわけですね。
というわけで、今後数年間、パート・アルバイトで働く人たちの給与は、毎年、自然に上昇していく見込みです。
マンションでは、管理員や清掃員がそれにあたります。
逆の視点を持つと、管理会社側からすると毎年、雇用コストが増大しているわけです。
過去の上昇率
賃金の引き上げがどのくらいのものなのか。
過去の値上げ幅を確認しておきましょう。
年度 | 全国加重平均額 | 伸び率 |
平成14年 | 663 | |
平成15年 | 664 | 0.15% |
平成16年 | 665 | 0.15% |
平成17年 | 668 | 0.45% |
平成18年 | 673 | 0.74% |
平成19年 | 687 | 2.04% |
平成20年 | 703 | 2.28% |
平成21年 | 713 | 1.40% |
平成22年 | 730 | 2.33% |
平成23年 | 737 | 0.95% |
平成24年 | 749 | 1.60% |
平成25年 | 764 | 1.96% |
平成26年 | 780 | 2.05% |
平成27年 | 798 | 2.26% |
平成28年 | 823 | 3.04% |
平成29年 | 848 | 2.95% |
平成30年 | 874 | 2.97% |
このように、平成28年からは特に、こう、あれですね。
なかなかエグい。
管理会社のコスト増加は、実際のところいくらなのか
管理会社は、「管理業務委託料金」を、毎月定額で管理組合に請求します。
その中で、最低賃金が影響するのは、2つ。
- 管理員業務費
- 日常清掃費
これらは、管理員さんと、清掃員さんの派遣費用のことです。
仮に、時給900円で雇用したとして、3%賃金が上昇し続けたとしたら、1時間あたりのコストは27円増加します。
1時間あたり27円の増加が、いったいどのくらいの影響を与えるのか。
例として、3パターンを考えてみます。
- 1日3時間×週3回勤務=週9時間
- 1日7時間×週3回勤務=週21時間
- 1日7時間×週5回勤務=週35時間
【1】1日3時間×週3回勤務=週9時間勤務の場合
週9時間×4.5週=月あたり40.5時間勤務。
月40.5時間×27円=月間1,093円増加。
月間1,093円×12ヶ月=年間13,122円コスト増加。
【2】1日7時間×週3回勤務=週21時間勤務の場合
週21時間×4.5週=月あたり94.5時間勤務。
月94.5時間×27円=月間2,551円増加。
月間2,551円×12ヶ月=年間30,612円コスト増加。
【3】1日7時間×週5回勤務=週35時間勤務の場合
週35時間×4.5週=月あたり157.5時間勤務。
月157.5時間×27円=月間4,252円増加。
月間4,252円×12ヶ月=年間51,024円コスト増加。
フロント一人あたりの持ち分で考えると、年間30万のコスト増加
管理会社の利益のわかりやすい単位として、「フロント一人あたりの利益(経費)」があります。
10棟を担当するフロントを例に出して考えてみます。
平均して、管理員の派遣時間が週21時間だったと仮定します。
平均50戸クラスだと週21時間くらいじゃないかな、と思いますので、週21時間を例に採用しています
週21時間勤務の物件では、年間約3万円のコスト増でした。
ということは、10棟で年間30万円のコストが増えている計算になります。
過去、3年くらい、3%アップが続いています。
となると、フロント一人あたりの粗利は、平成28年から3年間で年間100万円くらい減ってる(可能性がある)というわけなんですよね。
仮定だらけの話ではあります。
実際は、現場現場で違いはあるでしょうが、決してのんびりしていい数字ではないですよね。
冷静に考えると、会社としてはめちゃくちゃつらいです。
フロント一人の年間粗利いくらだと思ってんの!? と。
管理組合への値上げ交渉は?
人件費が増加すると、最終的には商品価格に反映されます。
マンション管理の場合は、定額委託費の値上げ、というかたちで現れます。
「いつ」「どのくらい」という話は難しいですが、まあ、我が社でもポツポツ頃合いかなーという感じですので、活動している会社は少なくないんじゃないかなー、と思っています。
10人のフロントを抱える事業所は、3年前と比べて1000万くらい利益が減ってるわけです。
どこの管理会社も、そろそろいいところで全体的な値上げ交渉を行わざるを得ないだろうとは思います。
悲しいことに、企業努力で解決する問題ではありませんしね。
仕入れ値が上がっていて、そしてそれは1円たりとも値切ることができないわけですから。
管理組合にとっては、消費税の増税もあるのでキビシー
そろそろ消費税の増税も目に見えてきました。
一般管理費の年間支出額は、特色のない普通のマンションの場合、1戸×10万円くらいに落ち着くことがおおいです。
例えば、50戸規模のマンションだと、年間の支出は500万くらいだと思います。
これが8%→10%に上がるとなると、すんごい乱暴に計算して、500万×2%=10万円くらいは年間の支出が増加します。
管理委託費の値上げも、おそらく月間で5000円~1万円くらいUPを目安に管理会社は交渉してくると思います。(感覚的なものです、物件によって違いはあるでしょうが・・・・)
一般管理費の剰余金から、問答無用に20万円分が減って無事に生き残るマンションはどうでしょうね。小規模マンションはかなりアウトかな、と思います。
特に、5%→8%に上がったときに、「なんとか値上げせずにやりくりしてきた」マンションは、一気に赤字転落も考えられるのではないかなー、と。
5年ほど前といえば、共用部分のLED化で、一般管理費の見かけ上の支出は減ったマンションも多かったでしょうしね。
現状、支出削減案は出し尽くした感はありますから、どーしようもないかなあと思っています。
いよいよ管理委託費の値上げも本格的にはじまるかなぁ
いよいよ、「管理費の値上げ+一般管理費の値上げ」の話をしないといけないのかなー、と、私は思っています。
同時にするとわちゃわちゃする気がするので、時期をずらして理事会にもっていきたいところなんですが、どっちにしても、結局わちゃわちゃすることは目に見えているので、めんどくさい総会は1年で終わらせたほうがむしろ効率的なのでは? という気もしています。
この機会に、管理会社の変更(リプレイス)でとってきた、異様に安い委託費のマンションの処遇も、本腰入れて考えたいところではありますよね~。
最低賃金の引き上げなど、管理組合にとってはどうでもよいことです。 その説明は、総会で管理会社がすべきことで、素人で雇用経験のない管理組合では、最低賃金の説明から始めなければなりません。 消費税の改定では、新聞雑誌等で報道され、増税分の転嫁はほとんどの方が知っており、自身の生活にも関係するため、理解は比較的容易です。 しかし、最低賃金の改定は、たびたびあり、そのたびに管理委託費の改定の話が出て当然です。 管理会社の都合だけで話をするのは止めませんか?