世間ではLED照明が一般化しました。
最近の新築マンションではほとんどがLED照明を使っていて、蛍光灯はあまり見ないですね。
LED照明のメリットは、電気代が安いこと、そして寿命が長いこと。
その反面、電球代が高い、交換が容易ではない、などのデメリットもあります。
さて、LED照明へ交換したマンションも、そろそろ数年が経過してデータを取れる時期になりましたので、導入後の調査をしました。
いくつかピックアップして情報を共有します。
LED化したマンションのデータ
早速データです。
項目 | Aマンション | Bマンション | |
築年数 | 15 | 10 | |
消費電力 ※月平均 |
変更前(Kwh) | 2100 | 1750 |
変更後(Kwh) | 1250 | 1200 | |
削減率 | 40% | 31% | |
電気代 ※月平均 |
変更前(円) | 60,900 | 50,750 |
変更後(円) | 36,250 | 34,800 | |
月間削減額(円) | 24,650 | 15,950 | |
コストメリット | 年間削減(円) | 295,800 | 191,400 |
初期費用(円) | 800,000 | 500,000 | |
損益分岐(年) | 2.7 | 2.6 | |
照明の状態(※1) | 1 | 1 | |
工事の方法(※2) | 1 | 1 | |
施工業者 | A社 | B社 |
項目 | Cマンション | Dマンション | |
築年数 | 20 | 15 | |
消費電力 ※月平均 |
変更前(Kwh) | 800 | 2050 |
変更後(Kwh) | 480 | 1200 | |
削減率 | 40% | 41% | |
電気代 ※月平均 |
変更前(円) | 23,200 | 59,450 |
変更後(円) | 13,920 | 34,800 | |
月間削減額(円) | 9,280 | 24,650 | |
コストメリット | 年間削減(円) | 111,360 | 295,800 |
初期費用(円) | 300,000 | 700,000 | |
損益分岐(年) | 2.7 | 2.4 | |
照明の状態(※1) | 1 | 1 | |
工事の方法(※2) | 1 | 1 | |
施工業者 | C社 | C社 |
項目 | Eマンション | |
築年数 | 25 | |
消費電力 ※月平均 |
変更前(Kwh) | 3,200 |
変更後(Kwh) | 1,650 | |
削減率 | 48% | |
電気代 ※月平均 |
変更前(円) | 92,800 |
変更後(円) | 47,850 | |
月間削減額(円) | 44,950 | |
コストメリット | 年間削減(円) | 539,400 |
初期費用(円) | 2,500,000 | |
損益分岐(年) | 4.6 | |
照明の状態(※1) | 2 | |
工事の方法(※2) | 2 | |
施工業者 | D社 |
表を見るときの注意
照明の状態(※1)の、数字の意味
1=ほとんどが蛍光灯器具。
2=白熱灯・水銀灯などの、消費電力の多い器具あり。
工事の方法(※2)の、数字の意味
1=器具の改造、もしくは電球交換のみ。器具交換は行わず。
2=すべて器具交換。
電力とは?
マンション全体の従量電灯の電気使用量をさし、メーター検針によって表示された数値をそのまま転記。そのため、電灯以外の電力も含まれています。(例えば、共用部分のエアコンに使われた電力など)
電気代の計算について
一律で消費電力×29円として計算しています。
電力会社側が電気代を変更しているため、実際の金額を比較すると時期によっては条件が変わってしまい比較にならないからです。
そのため、削減額は目安となっています。
データの信憑性
端数を切ったり、数字を若干いじったりして、意図的にぼやかしています。
大きな視点では誤差範囲だとは思いますが、細かく見ると生データとは違いがあります。
その過程で、「アレ?」って数字が混ざってるかもしれませんが、まー、そういうことなんでよろしくです。
工事の方法
A~Dマンション(E以外)
A~Dマンションは、すべて、『器具は交換せず、電球のみを交換した』マンションです。
蛍光灯の直管タイプ(棒みたいな蛍光灯)については、安定器を取り外して、100V電源をLEDへ直接つないでいます。
丸型蛍光灯については、丸型のLEDを設置する業者、パネル式蛍光灯を自作する業者とありました。将来のメンテナンスを考えると丸型LEDを素直につけておけば良かったなあと後悔しています。(自作業者だと、修理をその業者以外に依頼できないので・・・)
FHTタイプの蛍光灯ダウンライト(差し込んでグルっと回すタイプの口金のやつ)については、器具交換をする業者、口金交換をする業者、パネル系LEDへ交換する業者、など、業者によって提案は様々でした。
消費電力(削減メリット)だけで考えると、どれを選んでもそれほど差はなかったのかな、と思います。
ただし、仕上がりの美観には大きな違いがありました。
特に、パネルタイプのLEDは群を抜いてきれいです。
↑パネル系ってこんなやつ。
Eマンション
Eマンションについては、20年以上が経過する中で照明器具が傷んでいたこともあり、まるっと取り替えを行いました。
A~Dと比較して工事費は高額(約250万円)ですが、どちらにしても器具の交換時期であったことを考えると、ちょうどいいタイミングだったかな、と思います。
私は無駄とは感じませんでしたし、組合側もすんなり受け入れていたように思います。
業者について
業者は4社。
同条件のA~Dマンションでは、初期コストを回収する期間にはさほど違いはありませんでした。(2.4年~2.7年程度)
相見積もりをしたことも一因かとは思いますが、まあ、業者間で技術力には大きな差は無いのかなー、と思います。
データを取った所感
器具交換のついでにLED化をしたEマンションを除き、約3年程度で初期費用を回収できたことを考えると、LED化には電気代削減に非常に高い効果があったと考えています。
Eマンションで大きくコストカットができている(消費電力が半分になっている)要因は、単純に、既設照明に白熱灯がたくさんあったことです。
A~Dマンションと同じように蛍光灯からの交換であれば、ここまでの大きな削減はできなかっただろうと考えています。
反省点
美観上の問題
器具交換を行わず、口金だけで交換した場所については、結果として美観に大きな影響が出た個所がありました。
もう少し仕上がりについては気にしたほうがよかったなー、と反省。
また、外壁塗装を行っていた物件では、工事の際に照明器具の取り外しての塗装が仕様に含まれていないマンションがありました。
器具交換の際、器具が小さくなると下地がガッツリ見えることがありましたので、塗装屋さんを呼ぶかどうかで協議が整わずかなり消耗しました・・・。
見積もりに最初から入れといたほうが良かったナー、と思いました。もしくは、サイズの大きな器具を選定するか、目隠し用の化粧板の設置、などですね。
照明の色の選択
色については、全て現状と同じものとして見積もりをしたのですが、ついでに変えておけばよかったと思いました。
LEDに限らず、照明には色があります。
色温度(ケルビン)で数値として表示されるのですが、一般的には次の3つ。
- 電球色 オレンジ色 3000ケルビン程度
- 昼白色 クリーム色っぽい白 5000ケルビン程度
- 昼光色 青みがかかった白 6500ケルビン程度
となります。
最近のマンションだと、オレンジ色の電球色を利用している事が多いと思います。
ホテルっぽくて、温かみのある色です。
反対に、少し前のマンションだと、『蛍光灯=白色』を利用しているマンションが多く、いかにも『賃貸マンション』な感じが拭えません。
LEDに限らず、蛍光灯でも色を変更することは可能なのですが、そのためには電球の交換をしないといけません。
普通は、蛍光灯は一斉に交換しませんよね? 切れたものから交換していきます。
となると、一つ一つ交換するとちぐはぐな色になってしまうので、途中から色の変更は難しいわけですね。
LED化の際には全部取り替えますから、色の変更は容易です。
白っぽい蛍光灯を使っている場所を暖色のオレンジに変更しておけばよかった、とこれは後悔しています。
見た目のグレードが上がります。
LEDの寿命
性能上の寿命は4万時間程度。
では、実際にマンションではどのくらい点灯しているのか? を、計算します。
24時間点灯の場合は、24時間×365日=8760時間。
8760×5年=43800時間。
そういうわけで、常時点灯の個所は、5年程度が寿命と認識してよいかと思います。
半日点灯の個所は、その倍の10年程度かな、と。
ただ、LEDの寿命は、『明るさが7割になったとき』です。
使っていくうちに、少しずつ明るさが減っていき、最初と比較して7割になるタイミングが4万時間、ということです。
実際には、マンション全体がゆっくりと暗くなっていくので、体感としてそれを認識することはまずできません。
5年が経過したマンションに行ってみても、正直な話、暗いかどうかはよくわからないです。特に違和感は感じられません。
やはり、寿命のタイミングは、故障して点灯しなくなった時になるのではないかなー、と思います。
LEDは故障するか?
機械ものですから、やはり故障はあります。
通常は1年~2年程度が保証期間だと思いますが、会社によっては5年程度保障しているところもあります。そこはご確認を。
ちなみに、2年以内に1%程度は故障しているイメージです。
その後、5年程度経った段階で、一気に故障(点灯しなくなるタイプの故障)が発生しています。
要因の一つには、密閉器具で利用しているというところかな、と。
排熱がうまくいっていないのだろうと思います。
製品が悪いというより、利用環境が悪いということが故障に影響している可能性が高いです。
比較的、国内製品(東芝、パナソニックなど)は故障しにくいように思いますが、サンプルが少なく確たることは言えません。
国外製品を輸入したオリジナル商品を使用している会社の製品は、確かにこわれやすいようにも思いますが、気のせいかもしれません。とにかく、サンプルが少なくてよくわからないです。
検品の問題もあるかと思いますが・・・。
いずれにせよ、気のせいかな? と思う程度には、国内製品も国外製品も壊れまくっています。
何度も言いますが、これは製品の問題というより、排熱の問題だろうと認識しています。
器具交換を行ったEマンションや、開放部分に設置されている製品の故障確率は目に見えて少ないからです。
LED化の課題
「きれた照明の交換が管理員ではできない」商品があるのは明らかなデメリット。
その場合、故障交換工事費が比較的高くなってしまいます。(毎回専門業者手配となると、作業費が数万程度プラスされるので)
この対策はないので、24時間点灯の器具は5年毎に交換、半日点灯の器具は10年ごとに交換、というサイクルで強制的に交換するしか無いのでは? と、悩み中。
可能な限り、管理員で交換が可能なLED器具を設置しておくと、後々お安いと思います。
もう一つの課題は、器具一体型のLEDです。
一体型とは、電球の交換ができず、LEDをが本体に内蔵されているタイプ。故障したら器具ごと交換をしなければならない機種のことです。
結果的に、10年程度ごとに器具を取り替えなければならないのだとしたら、はて、コストメリットはあるのだろうか?? と。
器具も、数年したら廃盤になります。
頻繁に取り替える場合は、同じ形式の器具がなく、見た目にバラバラな商品が設置される可能性があり、統一感を失うことにも繋がりかねません。
蛍光灯とLEDの消費電力の違い
蛍光灯も、めちゃくちゃ大きな電気を消費するわけではありません。
どの程度違うのかを確認するため、ほぼ同じクラス(60W相当)のLEDと蛍光灯で比較します。
蛍光灯=750ルーメン
LED=810ルーメン
と、若干明るさに違いがある(LEDのほうが明るい)ものの。
消費電力は、蛍光灯11W、LED7.2Wです。(65%の差)
この商品の場合、取り替えると、単純に、約35%の電気代削減効果が見込めるわけです。
上記の商品は、クルクル回せば容易に交換が可能なタイプなので、取替にはほとんど手間がかかりません。
基本的には、マンションに在庫を保管して、管理員が交換することになりますから、特別な交換費用はかからないでしょう。
この製品の場合は、長寿命・低消費電力のLEDのほうが圧倒的にメリットがあります。価格差もほとんどありませんしね。
問題は、施工に手間がかかる商品の場合です。
このパネル式の商品の場合、取替はそれほど難しくはありませんが、安定器が設置されています。
通常、LED故障の際は安定器の交換は行いませんが、型式の変化などで安定器を取り替えなければならないこともあります。安定器と電線との接続には、電気工事士の資格が必要となります。
安定器の変更がなければ管理員での交換は可能です。
ただ、交換のときに天井を触るので、クロスが汚れてしまったり、無理な力がかかってクロスや天井材に傷がついたりしやすいです。
そういうわけで、あまりこのタイプのダウンライトの取替工事は、慣れていない人間には任せたくないなあ、というのが正直なところです。
となれば、電気工事店に依頼することになるのですが、商品代+工事費がかかるので、一つ取り替えて1万~2万程度の請求が通常だろうと思います。
10W程度の電球の場合、1年間の電気代は、2600円程度です。
それがLED化により35%安くなったとしても、年間で800円程度の利益ですから、工事費に費用を取られていたのではメリットなんて消し飛びます。
このリスクをどう考えるかは、しっかり精査する必要があるでしょうね。
その他の注意点、気づいたこと
照明器具の劣化が進んでいるマンションは、器具交換のタイミングと同時にLED化を検討したほうが良いと思います。
無理に時期を早めて、器具改造でのLED化をするメリットはあまりないと思います。
(ほっといても近いうちに取替時期が来ますから)
それと、2回目の大規模近くまで引っ張ったマンションなら、大規模と一緒にしたほうがいいかなーと思います。
塗装工事の際に、どのみち照明は一度外すことになるので、ついでに取替をすることで工事費が圧縮できると思います。
そのうえ、結果的に競争入札になるので、少ない労力のわりに安い金額で発注できる可能性が高いです。
今後、LED化を推進するか否か
基本的には推進をする、という認識でいます。
十分にコストは回収できることがわかったので。
(単に、LED以外の電球は今後生産されなくなるということも一因ですが)
とはいえ、課題のところでも書いたとおり、諸手を挙げて飛びつくほどのメリットが見いだせるわけでもありませんでした。
総合的に考えて、メリットはあるものの『劇的なメリットはない』と結論づけます。
なので、現在設置されている照明器具本体の寿命と同時に取り替えるくらいが自然で、検討の手間も省けてお得なのかなあ、という気がします。
また、可能な限り取替が容易な器具を選択することも、金額的なメリットを享受するポイントですね。
(美観を優先させるか、金額を取るか、という話ではありますが・・・)
おわり
以上です。
基本的な考えとしては、今後、蛍光灯を選択するメリットはありません。(いずれ生産されなくなりますから)
そうなれば、どうしたところでLEDと付き合うことにはなるのですが、蛍光灯と比較して光の向きが制限されていたり、電球交換が難しかったりと、考えなければならないことは多いです。
また、電球はインテリアとしての側面もありますから、不慣れな業者に任せていると「えー?」と言いたくなるような仕上がりになる可能性が捨てきれません。
このあたりは、ノウハウ・経験もそうですが、担当者が気のつく人かどうか、にも左右されます。
発注者や、それをサポートする管理会社としても、しっかり目を光らせないといけないです。
単に金額だけにとらわれる事なく、総合的に判断したいところですね。