組合運営

分譲マンションにおける、民泊新法への対策

平成29年6月16日に、住宅宿泊事業法が交付され、これにより全国的に民泊ができるようになりました。

で、それに伴いまして、全国の分譲マンションも、民泊の対象となりました。

ざっくりと今回の流れを書き記しますと、以下のような感じです。

民泊のざっくり流れ

  • 今までは、東京・大阪等の一部の地域でしか、合法的な民泊は認められていなかった。
  • が、この度、法改正があり、遅くとも平成30年6月までには全国で民泊がOKになる事が確定した

ここまでが、全国で同じ条件の話です。

で、それに対して。

『今から(平成29年から)』マンションでは何をしないといけないかを整理すると、

  • 現状、全国のマンションで使用されている管理規約の記載事項では、民泊を禁止することはできない。(前提条件)
  • そのため、マンションの管理組合は、民泊をして「良い」か「ダメ」かを、話し合わないといけない。
  • そしてその時期は、法改正の施行が始まる前に決めておかないと余計なトラブルが予想されるので、早い方が良いです。

という感じです。

では、以下にて細かく整理していきます。

今回は、管理組合側から見た対策についてです。

情報の正確性は、以下も併せてご確認のうえ、ご自身でご判断下さいませ。

 ⇒住宅宿泊事業法案(民泊新法)(観光庁のHPに飛びます)

 ⇒マンション標準管理規約(民泊対応版。国土交通省のHPに飛びます)

分譲マンションで民泊は行えるのか

住宅宿泊事業法案(民泊新法)が施行された後に、可能となります

施行後は、一定の条件はありますが、基本的には自治体への「届出」(許可不要)で、事業は開始できます。

現状のマンション標準管理規約で、民泊は禁止できないのか?

マンション標準管理規約では、「区分所有者は、その専有部分を専ら住居として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と規定しています。

これをもって民泊を禁止ととれないのか、という点。

結論としては、「禁止されているとは言えない」です。

 

何故か。

 

住宅宿泊事業法案(民泊新法)では、「住宅宿泊事業」のことを、「宿泊料を受けて ”住宅に” 宿泊させる事業」としています。

なので、民泊は住居利用に該当、標準管理規約をすり抜ける(禁止されていないと言える)、と。

 

また、国土交通省は、国会答弁において、「管理規約上に民泊を禁止するか否かが明確に規定されていなくても、管理組合の総会・理事会決議を含め、管理組合として民泊を禁止する方針が決定されているかどうかについて届出において確認する事とし、禁止する方針が決定されたマンションにおける事業の実施を防止する」との答弁を行いました。

(つまりここでも『禁止されていなければOK』と読み取れます)

 

このあたりは、国家戦略的な民泊の推進とか、いろいろなものが交じり合っているのだろうとは。

とはいえ、『禁止されていないから』との理由で事業を開始してトラブルになると、すこぶる根の深い問題になりかねません。

マトモな事業者であれば、それ相応の配慮、対応が期待できますが、この市場は成長過程です。

成熟な業者が「やちゃえやっちゃえ」で参入し、マンションが荒らされるケースは、容易に想像がつきます。

(実務者の率直な意見としては、権利義務関係が複雑化するうえ明確な解答の無い、一番やっかいなパターンです)

 

本件の結論として。

『管理組合は、YESorNO、明確な意思表示を今のうちにしなさい』、というのが国から示された方針であろう、と認識すべきです。

管理組合は、いつまでに民泊の可否の意思表示をしないといけないのか

このページを執筆している平成29年9月2日現在、明確なスケジュールは未定です。

明確に決まっていることは、平成30年6月16日『まで』には、住宅宿泊事業法案(民泊新法)が施行される(つまり民泊が始まる)、ということ。

が、なんとなくのスケジュール感では、

と、なりそうっぽい?

 

事業の届け出は、民泊解禁の3ヶ月前に始まると予想されています。

もし、事業者が届け出を行う時点(早ければ来年の1月頃?)で、マンション側で何も決まっていなければ、しれっと開始される可能性があるので、それまでに意思表示が必要。

となれば、遅くとも本年度(平成29年度)中には意思表示をした方が良いと思われます。

民泊OK!かもんかもん!だったら意思表示しなくていいよね!

ダメです、してください。

なんでしないといけんのか。

やりたいやつは勝手にやるんだろ?

 

と思います?

まあそうなんですけど。

 

問題は、『何をもって「民泊OK」と言っているのか』、ということです。

「みんなが言っている?」

ですか?

さすがにそれだけでは通りません。

もし、理事会で「民泊OK!みんな言ってたしね!」となったとしても、そこに参加していない方が「知らなかった、嫌だ、ダメだ、出ていけ」と言い出すと、そりゃもう、モメますよ?

例え、事実、概ねほとんどの方が民泊OKという共通認識はあったとしても、『総会の決議により民泊の可否を意思表示する』事は最低ラインであると認識すべきです。

(そうすることで、民泊反対派にも『ダメである理由』を示すことができます。結果、反対派の否定的な意見を真っ向から切り捨てる事ができ、スムーズなマンション運営が実現します)

意思表示は、理事会決議? 総会決議? それとも管理規約改正で?

管理規約を改正する、これを最終目標とする。

ここまでした方が良いです。

 

ですが、管理規約の改正には、「全区分所有者の賛成の3/4」という非常にハードルの高い決議が必要です。

「ちょっと難しいかなあ」という場合の次善の案としては、『総会の普通決議にて意思表示する』、です。

 

まあ、個人的な思いとしては普通決議で禁止するくらいでも「別に良いんじゃ?」って気はしていますが・・・。

今のところ、国土交通省から明確な指示は出ていない様です。

前述の国会答弁を引用するに、理事会決議でも禁止されていると認識されるようですから、総会決議ならば間違いはないと考えてもよい、様な気はします。

が、いずれにせよ、こういったマンションのルールは管理規約において制定されるべきことです。

 

『(議決権の過半数で決議される)普通決議で決められる使用細則』ではなく、『(全区分所有者の賛成の3/4で決められる)特別決議で決められる管理規約』によって取り決められるべきことを、普通決議で採決してしまってそれが有効か否か、となると少々つけ入る”スキ”がある様にも思います。

というわけで、できれば管理規約改正をしたほうが、より間違いはないかなあ、と思います。

 

難しそうなら、総会の普通決議 ⇒ 翌年に管理規約改正 を目指して活動する、というのがスムーズかつ現実的かな。
あくまでも私見ですが。

平成30年1月までに総会決議はできない・・・

リミットまであと3ヶ月しかありません。

現実的に考えて、かなりの割合で難しかろう、と思います。

 

ですので、対案としては、

  1. 自由参加の意見交換会+理事会を開き、YESorNOの大まかな意見を集約する
  2. 理事会で、YESorNOを決議
  3. その旨を広報する (ここまでを本年度中に実施)
  4. 次回総会でそれに沿って決議する

というくらいのスケジュール感になってくるのではないかなあ、と。

このあたりの采配は、分譲マンションの管理会社(と、フロント担当者)のスキルにもよりそうですね。

具体的な、管理規約改正案

↓にあるんでどうぞ。

http://www.mlit.go.jp/common/001198805.pdf

※国交省HPの、PDFページに飛びます。

 

一応テキストで抜粋

◆民泊OKの場合

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

◆民泊NGの場合

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

http://www.mlit.go.jp/common/001198805.pdfより抜粋

 

 

おまけ。以下は当サイト管理人の主観です。

分譲マンションで、民泊って禁止すべき? それとも認めた方が良い?

ごくごく一般的な考え方としては、民泊は分譲マンションにそぐわないと思います。

(外国はどうしてるんでしょうか??)

 

どう考えても、区分所有者(持ち主)が、そのまま住まう分譲マンションにとってはリスク・デメリットだらけです。

以下に書きだし。

セキュリティの問題

  1. 短期利用者に鍵を貸し出すことによる鍵複製のリスク
  2. マンション内に見知らぬ他人が増える事による間接的なリスク(知らない人がいる事が当たり前になる事のストレスはかなり強い)

次に、生活習慣の違う人間が、頻繁に入れ替わる事の問題

  1. 暗黙の了解で運用してきたルールが崩壊するリスク
  2. 苦情系が解決しないリスク(苦情受付をしてくれたところで、人が変わるんだから「うるさい」と言ったところで再発リスクはある)

そして、短期貸しという高い収益性に対するコスト問題

  1. (例え目に見える金銭的には負担していなくても)管理組合(や、管理会社)は、民泊対応で手間をとることになるが、そのコストはだれが負担?
  2. 様々なリスクを管理組合は容認する事に対して、そのリターンは?
  3. それらが解決されない限り、間接的に管理組合が民泊事業者のコストを肩代わりしていることになる

パッと思いつく当たりで。

リスクだらけですよね。

 

だいたい、賃貸入居者が1年スパンで変わる事に対しても普通は「あそこ良く変わるよね」と否定的なうわさが流れるのに、数日で入れ替わるなんて・・・。

また、分譲マンションは、明文化されていない特殊なルールが運用されている事も多いです。

概ね無償で労働力を提供する、ごみ当番や、役員についても、それを担当しないのに収益とはこれいかに、という問題は付きまといます。

短期宿泊って、うまく運営できれば普通に貸すより儲かりますしね。

 

そういうお金の話から、不平不満は出かねません。

(何で私たちがあいつらのゴミを始末しないといけないんだ?等)

もちろん、外部区分所有者に対して追加管理費を設定することは可能ですが・・・。

 

そういうわけで、少なくとも、『ほとんどの住戸に区分所有者が住んでいる』という分譲マンションであれば、民泊は拒否する以外の選択肢はあり得ないと思います。

トラブルが噴出する事が目に見えていますし。

(民泊事業者から手間賃を特別徴収できる管理規約を設定して、かつ、よっぽどやる気のある役員が目を光らせるというならば良いかもしれませんが・・・)

民泊に賛成した方が良いマンションは?

築後年数がたち、空き部屋が目立つマンション。

そういったマンションならば、民泊は受け入れてよいと思います。

 

観光地であり、部屋自体も安く販売されているならば、収益事業として目途が立ちます。

そしたら、部屋自体の買い手も現れる可能性は高いです。

結果、資産価値があがり、マンション自体が活性化するのではないかと。

以上です

まずもって大切なことは、『トラブルは起こる前に潰す』

基本中の基本です。

早く対応した方がいいですねー(私、最近まで知りませんでした・・・)

 

今後、民泊ビジネスは成長を続けるはずです。

知識・経験の無い業者の参入もあるでしょうから、十分に注意していかないといけません。

現状、分譲マンションにとってはリスクだらけですが、市場が成熟すると、それらの問題は概ね解決できそうです。

将来は、ひょっとしたら『当たり前』のシステムになっているかもしれませんね!

(というか、いずれはならざるを得ない様にも思います。人口減ってるのに家は増えてるんだから・・・)

 

ABOUT ME
はじめちゃん!
はじめちゃん!
分譲マンションを管理する会社に勤めています。 資格:管理業務主任者/マンション管理士/宅地建物取引主任士/マンション維持修繕技術者/二級電気工事士/2級建設業経理士/二級建築士/1級船舶免許

POSTED COMMENT

  1. アバター 二郎 より:

    勉強になります。フロントとしては、暴力団の役員就任排除等とあわせて、作業が増えて大変ですが・・・

  2. 金曜日に知って、あわててまとめました。
    (先日おっしゃってたの、このことだったんですね!!)

    作業量について、まったくのその通りで。
    1物件だけならいいのですが、10もあったら、『無限に終わらない』感覚に・・・。
    同じような話を同じような時期にしてるせいか、どこでどんな話をしたか、よくわからなくなってくるんですよねw

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