フロントの仕事

良いマンション管理員さんの条件は? 【事例】エアコン室外機の掃除をしてくれる管理員さんは良い管理員さんか?

管理員さんの良し悪しは何で測るか。
私にとっては、今ひとつ答えの出ない命題です。

(上記のツイッターについては、枠内をタップもしくはクリックしたら全部が読めます)

これら一連のツイートで紹介したのは珍しい話ではなくて、全国のマンションで起こっている現実です。

「まじめ」という言葉は、本当にいろいろな含みのある言葉です。
そして、「真面目に働いているから評価される」”わけではない”ことは、残念ながら世の中の日常でして。

だから、結局のところ、それって能力・適正なのかなあ、と、思ったり、思わなかったり。

今日はそんな、フロントにとっての管理員さんの話です。

例)エアコン室外機を掃除する管理員さんのケース

例を出して考えてみます。
皆さんも、チョット考えてみてください。

Aさんが管理員としてマンションに派遣されました。
Aさんは非常に真面目で、そしてよく気のつく方でした。

住人さんからの評価も上々。
フロントとしても、安心して任せられる管理員さんです。

管理員業務の一環として、清掃業務があります。
Aさんは真面目ですから、掃除も一生懸命。
マンションはどんどんピカピカになっていきました。

Aさんは、会社に支給されたマニュアルどおりに掃除をしてきました。
しかし、やはりマニュアルはマニュアル。
マンションの固有の事情を汲んでくれるものでもなく、マニュアルに無い箇所の清掃も実施し、工夫して業務にあたっていました。

そんなある日、「廊下に設置されたエアコンの室外機が汚い」ということに気が付きました。
それらのエアコンは居住者が設置したものであり、マンションのものではありません。個人の所有物です。
とはいえ、廊下に設置されたエアコンはほとんどの人が掃除をしていなくて、汚れが目立ちます。

Aさんは、「私が掃除をすればみんなに喜んでいただけるのでは!?」と思いたち、廊下のエアコン室外機を掃除しました。
結果、室外機はピカピカになり、マンションの美観はグレードアップ。
居住者さんにも喜んでもらえて、Aさんはやりがいを感じました。

はい。どうでしょう?
ある話じゃないかなあ、と思います。

皆さんはどう感じましたか?

「良い管理員さんだなあ」
「私のマンションにも来てほしいなあ」

でしょうか?
フロントなどの現場担当者なら、「うーん・・・」と思ったかもしれません。

そうなんですよね。
このお話、「メデタシメデタシ」の美談では終わりません。

管理員がエアコンを掃除する際に想定される問題点

軽く問題点に触れてみます。

室外機は個人の所有物であり、管理会社は清掃業務として委託を受けていない

契約書の話です。

エアコンは個人の所有物ですから、清掃を含めた日時用的な管理は個人が行なうべきもの。
であれば、その清掃費用は個人が支払うべきものです。これが本来の考え方。
それを、共有財産を管理する団体である管理組合が支払うというのは、少し目的の違うお金の使い方になってしまいます。
管理会社としても、エアコンの清掃についての契約を行っていません。

「範囲外の仕事をしてくれてありがたい」という考え方も一つです。
が、「エアコンを清掃する時間で、本来できたはずの業務が滞っている」という考え方もあってしかるべきです。
仮に、業務が滞ることなく特に支障がないのであれば、「エアコンを掃除する時間を削減することが可能なのでは?」という考え方もあります。

故障や、劣化が発生した場合のトラブル

次に、管理員の行動に対する、管理会社の使用者責任の話です。

万が一、管理員がエアコンを清掃する過程で、故障が発生したら?
あるいは、傷をつけてしまったら?

起こりうることですよね?

管理員の行動によって発生した業務上のトラブルは、多くの場合は会社が面倒を見ていると思います。(損害について、会社は従業員に求償する権利があるとは思いますが、そこまでしているケースは稀かと思います)

この場合は微妙です。
会社としてもエアコンの清掃は業務範囲にはないわけで、「壊してしまってすみません、補償します」とは、すっと言えないわけですね。

私は、実務として管理員の上長にあたる立場なわけですが、特に心配するのはこの辺です。つまり、最終的に管理員が辛い立場に立たされる可能性が非常に高い。

善意であるはずの行為が、会社にとっては重荷になってしまうわけです。
もちろん、上司の立場では全力でかばいます。行動は善意であって、責められるようなものではない、と、私も思うからです。
とはいえ、会社から管理員に伝える言葉は、「どうして勝手なことしたの?もうしないでね」というニュアンスが、どうしても含まれるのも、やっぱり仕方なのない話です。
再発防止を考えるならば、特にそうなります。

個人の所有物を触られることを「気持ち悪い」と感じる人へのケア

人の感性はそれぞれです。

「掃除をしてくれてありがとう」という方もいれば、
「勝手にさわらないでほしい」という方もいます。

これは感性です。
業者としては、ひとりひとりの感性に配慮し、寄り添う必要があります。

現実はどうなっているか? 実務者の所感

以上のように、「業務外の仕事」には、懸念すべき事項がいろいろとあるわけです。

今回は、わかりやすくエアコンを例に出しました。
しかし、これは何もエアコンに限った話ではなくて、大なり小なり、多くのマンションで発生している”不幸な行き違い”です。

人が人のためを想って行なう行動に制限をつけるの?
という気もしなくもないのですが、しかし仕事として料金が発生する以上、プロフェッショナルとしての規律が求められると考えないといけない、とも思うわけです。

とはいえ、エアコンが汚いことも事実であり、改善は必要なわけです。

では、「清掃を管理会社が業務として受託すればいいじゃないか」という向きのご意見もあるでしょうが、しかしこれには非常に難易度の高い交渉が必要となります。
「見積書を作って、ハイ承認」というわけにはいかないのです。

(細かくは長くなるので省きますが、適正に行なうのであれば諸々のクリアしないといけないめちゃくちゃ高いハードルがたくさんあって、相当困難です。といいますか、万人が納得する形で適法に実施することは、現実的には不可能ではないかと思います)

そんなわけで。
現実的に、この問題解決のため管理会社が行なうアクションとしては、

「居住者で清掃を行うように周知するよう、管理組合へ働きかける」が、正解です。

本件の問題の本質は、「マンションの住人がマンションをどのように利用するか」ということであり、「管理会社が仕事としてきれいにするか否か」という話ではありません。

使用細則を設定するなり、周知し徹底するなり。
それは、管理組合が主体的に解決するべき事項であり、管理会社が解決することではありません。
管理会社は不動産管理のプロとして、『問題提起及びそのアドバイスを行なう』。
それが、本来のあるべき姿です。

とはいえ、現実にはどうでしょうね。
「やってくれてありがたい」と感じる人が大半なのではないかとは思います。
このあたりは、マンション管理の難しさというか、人間の難しさと言うか。
(いろんな感慨と含みをもたせて言いますが)マンション管理の難しさの真髄!みたいなところはありますね。

どんな管理員さんが求められるのか?

さしあたっては『上司へきちんと質問ができる人』が良いなあ、と思います。

今回のケースであれば、管理員さんサイドから、上司へ「エアコンの掃除をしたいと思うのですが、どうでしょうか?」と一言でも尋ねてみれば、何らかの回答があるでしょうから、それである程度は解決した問題かと。

実務をする中で特に思うのは、能力の高い管理員さんは総じて『報告すべきことがよくわかっている』と感じます。
報告すべきことを報告し、しかし、面倒になる程度には報告せず。

これは、マニュアルで指導できるものではないですし、また、マンション管理の知識の有無でもないように思います。
職業倫理感や、社会常識とか、なんかそういう話なのかなー、と。

会社員でも同じですよね。
デキる人は質問が的確です。

『ちょうどいい』距離感でフロントに接してくれる管理員さんに対して「ありがたいなー」と、私は感じています。

あとは、会社の業務マニュアルをしっかり読むことですね。
業務で必要なことは全部マニュアルにあるはずですから。

お客さんのためを想っての行動は大切です。
また、そういう気持ちがないと管理員さんって務まらないとは思います。そうじゃないとやってて面白くないでしょうしね。

なんですが、じゃあそれだけでいいのか、っていうと、やっぱりそうではないです。
少し厳しい言い方ですが、「頑張った”だけで”褒められる」のは学校までです。

管理会社にとって良い管理員さんは、必ずマンションにとっても良い管理員さん

「管理会社にとって良い管理員」の話をします。

特にネットニュースでよくみかける話なのですが、「マンションのためを想ってよく頑張ってくれるけれど、管理会社には疎まれる管理員さん」の話を、ちょろちょろ見かけます。

(こういった話題であまりよそさんの話を出すのもアレですが、https://diamond.jp/articles/-/165694この手の話です)

まー、主にマンション管理士の、いわゆる営業トーク的な話なんであんまり真に受けるようなものでもないのかなーとは思うのですが、しかし、ぜひ、この辺にも触れておきたいと思います。

 

前提として、『いい管理員さん』の定義は、管理会社・マンション、ともにイコールです。
1ミリのズレもないと思います。

めちゃんこわかりやすいので、例に出したWEBサイトの管理員さんの話から引用します。

Aマンションの管理員は元自衛官。退官後、まだまだ社会貢献したいと、自宅近くのマンション管理員を引き受け、その働きぶりでマンションでは大好評だった。ある日、翌日は大雪の天気予報に、なんと前日から管理員室に泊まり込み、雪の朝に備えてくれたという。

これでは、マンションにとっては『(都合の)良い管理員さん』です。
決して、『良い管理員さん』とは言えません。

***

一応、問題点に軽く触れておきます。

雪の影響でなんらかのトラブルがあった場合に大きな問題につながるであろうことは明白ですし、何もトラブルがなくとも、一晩待機した人件費は誰が支払うのか明確ではありません。
万が一、管理員さんになにかあれば、本人・管理会社だけではなく、マンションにとっても不幸です。
(そのような懸念は、管理会社としても、マンションとしても歓迎しませんよね?)

管理員業務の中で行なうべきことは、事前に大雪に備えておくことのみ。
前日からの待機が必要なのならば、管理会社と管理組合が別途契約を結び、適切な安全対策のうえで実行すればよいでしょう。
仕事はボランティアではありませんし、人件費の安売りはするな、という話です。

***

要するに、『信義則に則り』仕事をしましょうよ、と言いたいのです。

管理会社にとって良い管理員さんと、マンションにとっての良い管理員さんの定義が同じ、という理由は、管理会社とマンションは協力関係にあることが理由です。

どちらかだけに”良い”ということは、どちらかにとっては”悪い”ということになります。それでは敵対組織です。何も、お互い喧嘩してないですよね?信頼しあって契約してるんですよね?

どちらの味方をするのではなくて、適切に・正々堂々と・誠実に・真っ直ぐに・仕事に取り組みましょう、と。
そうすれば、どちらにとってもメリットを等しく享受できます。

「協力する」という視点が抜けた時点で、まー、どっちかの味方するとか、そういう話になっちゃうんじゃないのかなー。そういう仕事のしかたは少ししんどいんじゃないのかなー、と思ったり思わなかったり。

 

マンションにとって良い管理員さんは、管理会社にとっても良い管理員さんです。
もし、管理業者がそう感じていないのであれば、それは管理業者がマンションに対して誠実に仕事をしていないからです。

逆も同じです。
管理会社にとって良い管理員さんは、マンションにとっても良い管理員さんです。
もし、マンションがそう感じていないのであれば、それはマンションが管理業者を下に見ているから、かもしれません。
例えば、「無償で仕事をさせよう」と、でそう認識しているから、かもしれないです。

より良い条件で契約をすることに対する努力は、お互いするべきですけどね。
それとこれとは別かな、と。

おわり

私が、フロントとして管理員さんに求めることは

  1. 「ちゃんと報告しておくれ」
  2. 「お客さんへの敬意を持っておくれ」

 

だけ、です。

人柄がどう、愛想がどう、掃除のレベルがどう、業務処理がどう、とか、その辺はそこまで重要視していません。

もちろん、「どうでもいい」というわけではないんですが、やり方や考え方はひとそれぞれですし、(それほど高くない)基準点さえクリアするのなら、あえて苦言を呈するほどのことでもないのかなー、と最近は思っています。

会社の求める基準はまた別にあるのでなんとも言えませんが、私個人の感性としてはそんな感じです。
というか、それ以上を求めるのであれば専門職並みの給与(せめて1日2.5万円程度)を支払うべきです。エンドユーザーへの請求金額が1時間1500円前後の業務に対して、高すぎるスキルを求めるのは少し違うんじゃないかなー、と思います。

 

なんだかふわっとした結論になりましたが、以上です。

フロントとしては、まーいろいろなことも考えて、管理員さんへ指示をだしますし、また、マンションへ説明をするわけです。

「仕事をしたくない」から言ってるんだ、と思われるのは、少し傷つきます。そういうことじゃないんだよなー、と。
まあ、単にコミュニケーション不足に原因があるような気がしなくもないですけどね。

もう少し、お互いの立場を理解し合って、配慮し、尊重し合えたらよろしいですなー。

ABOUT ME
はじめちゃん!
はじめちゃん!
分譲マンションを管理する会社に勤めています。 資格:管理業務主任者/マンション管理士/宅地建物取引主任士/マンション維持修繕技術者/二級電気工事士/2級建設業経理士/二級建築士/1級船舶免許

POSTED COMMENT

  1. アバター 器用人 より:

    良い管理員は、法律や契約により定められたことをきちんとする方です。 同様の方は、管理会社にとっても、管理組合にとっても「うるさい」管理員です。 管理規約はマンションの憲法ですから、遵守はできないことでもしないといけません。 マンションは法体系の不備で完全に行き詰まり状態です。
    でも、「悪法でも法」ですから、知恵の見せ所です。

  2. 行き詰まってるのですか??ダメなところはダメで直していけばいいと思いますよ。
    特に、管理規約であればマンションで変更可能ですし、管理員だからという理由で放置して独自に活動するのはどうなのかなーとは思います。
    所有者ではないので限界はありますけどね~。

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