組合会計

管理会社が、時間が経った滞納管理費の回収を契約外とする理由

区分所有者がマンションの管理費を支払わない場合は、「滞納」という扱いになります。
実務的に、これは少なくない頻度で発生するものです。

だからこそ管理会社の役割は重大なのですが、しかし、契約上、管理会社は一定期間(3ヶ月~6ヶ月程度)を超えた請求及び回収の責任を負わない、としています。

標準管理規約 第10条 より抜粋

(中略)なお当該組合員が支払わないときは、その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は管理組合が行うものとする。

これの理由についてです。

はじめちゃん
はじめちゃん
 現場担当者である私が、以下のようにお客さんに説明している、という話です。
正解不正解の話になると、管理会社と管理組合の契約の話となるので、個別の事情によります。

管理会社が、滞納管理費の回収を契約外とする理由

1.コスト面の問題

『長期間の回収業務を契約内に含めると、それだけ管理委託費が高くなる』ことが理由の一つです。

回収業務を実施するには、それ相応のコストがかかります。(この場合のコストとは、主に回収にかかる人件費ですね)

管理会社と管理組合の契約は、定額料金制です。
となれば、長期間の管理費の回収業務を契約に含めると、それだけ管理会社は高額な料金を設定せざるを得なくなります。

結果、「ほとんど滞納の発生しないマンション」と、「たくさん滞納が発生するマンション」とで、金額が同じなのに業務量に違いが生まれることになります。

不公平ですよね?
顧客の不満足に繋がってしまいます。

2.滞納督促はデリケートであり、柔軟な対応が必要

一般に、マンションの管理費は銀行口座からの自動引き落としです。
口座残高不足による1ヶ月~2ヶ月程度の入金漏れは、日常的に、少なくない数が発生しています。

そのような場合は、あえて特別な対応はいりません。
書類・電話等でお知らせする程度で十分です。

ここまでは、管理会社が契約の中で機械的に行います。

 

しかし、3ヶ月~6ヶ月を超えるような滞納者は、何らかの事情を抱えているケースが多いです。

理由はともかくとして、「払わない」わけですから、督促も、初期段階よりも気合を入れる必要があります。
自ずと、督促の方法も変わってきます。(例えば、法的措置や、駐車場の強制解約です)

この場合、「では具体的にどのように対応すべきか」は、大まかな流れはだいたい決まっているものの、だからといって、どの場合も同じように対応すればよいわけでもありません。

「今は支払えないけれど、少し待ってくれさえすれば支払うつもりがある」人への対応と、「全く払う気がない」人への対応は、違うものになりますよね?

その判断を下すのは誰ですか?
管理組合ですよね。

管理会社には、適切な判断はできません。
もし、判断を任せてしまうと、管理会社の考え方ひとつで、強硬な取り立てが行われてしまったり、あるいは逆に、適切な請求が行われなかったりする可能性があります。

なので、やはり直接の債権者である管理組合が、督促を行なわないといけません。

だからこそ、通常の契約の中には含まれない、という趣旨です。

契約が終了したら管理会社はサポートしてくれない?

前述の通り、多くの管理会社と管理組合は、初期対応(3ヶ月~6ヶ月程度)で督促業務の義務が終了するような契約を結んでいます。
しかし、「契約が終わったんで、もう知らないです」と突き放す管理会社はいません。

「一旦契約上の義務は終了しましたので、これ以上のサポートが必要であれば別途契約を結びましょう」と、そういうことです。

標準管理業務委託契約書にも、次のようにあります。

標準管理規約 第10条より抜粋

(中略)なお当該組合員が支払わないときは、その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は管理組合が行うものとする。

前項の場合において、甲が乙の協力を必要とするときは、甲及び乙は、その協力方
法について協議する
ものとする。

※甲=管理組合
※乙=管理会社

実務的には?

理事会へのアドバイスについては、多くのマンションでフロント担当者がやってると思います。これは、3ヶ月だろうが、契約が終了した1年だろうが、同じです。

しかし、アドバイス以上の具体的な対応は契約外です。
(契約が終了したのちも、請求書を発行するなどの定型的な督促は行なうでしょうが、それ以上のことは行いません)

ですから、理事会が指示をするか、行動をおこないと進まないこともあります。
必要に応じて、法的な措置も視野に、「何が必要か?」をフロントと打ち合わせを行なうことが重要です。

はじめちゃん
はじめちゃん
管理会社には、法務部門があるか、もしくは弁護士と顧問契約をしている事も多いです。
相談すれば、法律面のサポートも受けられるかもしれません。(ただし、費用は必要かもしれません)

おわり

そんなわけで、

  • 定型的な回収業務で解決すると思われる初期対応は管理会社が機械的に行う
  • 難易度が高く柔軟な対応が求められる長期滞納者に対しては、一旦契約を打ち切り、必要に応じて別途契約を結びましょう

という趣旨で契約書が作成されているので、何も全く突き放すつもりはないですよ、と。

マンションの管理を預かるプロとしてアドバイスもしますが、管理組合が主体的に行動をしないと、私達管理会社の行動には限界がありますヨ、と。

そんな感じです。

おまけ:新人のフロントの方へ

管理組合から、「滞納があることの不備」を指摘されることもあるかもしれません。
特に、新人の場合、突っ込まれて言葉に詰まることもあるかもしれません。(わたしもありましたー!)

上でお話したとおり、管理会社に契約上の義務はありません。
とはいえ、マンションの会計を預かるプロですから、「契約は終わってマース☆」なんてボケたこと言ってたらお仕事なくなります。

「プロとしてのアドバイスが求められている」が、正しい認識かと思います。

では実際にどのような回答、対応が必要か。
は、結局、フロントの力量の話ではなくて、会社と管理組合の話です。
ですので、社内で上司に確認するのが正解でしょう。
何らかのマニュアルが用意されているはずですから、それも参考になると思います。

滞納について、あまりフロントとして責任を強く感じる必要はないだろうと思います。
人によっては強くフロントの落ち度を責め立てる方もいらっしゃいますが、私はその手の話は「犬が吠えてる」くらいにしか感じていません。

やることさえやっていれば、なんら恥じる必要はないです。
(だからといって理事会に全責任を投げてしまうとヒンシュクも買いますし、当時の理事会メンバーの顔を潰すことになりますから、あえて罵詈雑言を受け止めるなど上手にいなすスキルも必要ですが)

ただし、時効を成立させてしまうのは管理会社の落ち度です。
言い訳などしようがありません。重々注意をしましょう。
(具体例は知らないですが、善管注意義務を指摘されて損害賠償請求の対象となる可能性もあると思います)

「時効を成立させないこと」
ここは確実に管理会社の価値です。

ABOUT ME
はじめちゃん!
はじめちゃん!
分譲マンションを管理する会社に勤めています。 資格:管理業務主任者/マンション管理士/宅地建物取引主任士/マンション維持修繕技術者/二級電気工事士/建築業計理士二級/二級建築士/1級船舶免許

POSTED COMMENT

  1. 器用人 より:

     管理業務は、フロント個人ではなく、管理組合と管理会社で「契約を交わし」行っています。 理事長個人とフロント個人の契約ではありません。 管理会社社員の各種業務については、管理会社代表取締役の使用者責任があります。 どうしましょう?

  2. どうしましょう、とは、なにをでしょう??(╹◡╹)

  3. 器用人 より:

     各種業務を見ていると、自主管理の管理組合は、各種業務を中小規模のマンションでは10人以下で分担しています。
     フロントは一人で少ないところでも10件程度の管理組合の業務を事実上しています。 これでは、満足な管理はできず、ブラックと言われ、離職者が絶えません。

  4. 業務量のお話ですね?

    理事会の人数は、組合側の事情じゃないかな、と思います。
    自主管理の理事会の人数を持ち出して、フロントの業務過多を語ることはできないかなーと思いますよ(╹◡╹)
    会社のサポートがありますし、組合運営とフロントの機能は別ですしね。

    忙しさは、会社による、という前提なのでなんとも言えないですね・・・。
    改善できない会社は淘汰されるのが資本主義だと思いますよ~。

  5. 器用人 より:

     会社により違うことはありますが、会社でありながら、それぞれの担当者に任せているところもあり、会社として機能せず、会社の中に個人商店がある状態です。 会社は利益を最優先し、何をしても利益最優先だと、モラルハザードします。

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