管理業務主任者。
フロントマン。
あまり、一般的な言葉ではないので、「一体、どのような仕事をしているのか?」ということについては、ちょっと聞いたり調べただけではわかりにくいですですよね。
「マンションのクレーム処理係」と言われていることもありますから、不安ではありませんか?
このページでは、「管理業務主任者」という仕事について、実務者である私が解説をしています。
特に、「転職を検討されている方」に伝わればなー、と思っています。
フロントの転職に関するページ一覧
マンション管理に携わる仕事の種類
「マンション管理の仕事」には、いくつかの種類があります。
- マンション管理会社の社員である、「フロントマン」
- マンションで、清掃や事務受付業務を行う「管理員」
- そして、マンション運営のアドバイザーである「マンション管理士」
それぞれ、立場も違えば、仕事内容も違います。
今回は、「フロントマン」の仕事についてフォーカスしてお話しします。
管理業務主任者=フロントマン、という認識でほぼ間違いないと思って頂いて大丈夫です。(次項で説明します)
「管理業務主任者」という職業はない
「管理業務主任者」、という職業はありません。
宅地建物取引主任士(長いので以下、宅建と呼称します)、という『職業』が無いのと同じです。
「不動産の営業マン」が、「宅建資格」をもって、仕事をしていますよね?
同じように、「分譲マンションのフロントマン」が「管理業務主任者」という資格をもっているのです。
宅建=不動産の営業マンに必要な資格
管理業務主任者=フロントマンに必要な資格
「マンション管理士資格」を持った、「マンション管理士」という職業に就く方がいます。
独立開業の士業です。
サラリーマンの職業としては一般的ではないので、ひとまず、このページでは無視しています。
フロントマンの業務について
「フロントマンって何をしているの?」と聞かれて、一言でザクっと説明できないのがこの仕事。
それでも一言で表すと、
『マンション運営のサポート』
をしています。
マンションには、どんな機能が求められるのかというと、大枠では、
- 建築面のメンテナンス
- 設備面のメンテナンス
- 会計業務
- 組合運営
- コミュニケーション構築
フロントマンは、上記の機能をマンションがうまく発揮するための、潤滑剤的な役割を果たしています。
フロントマンの実務
フロントマンがすることは、複数の資料をまとめて比較資料を作ったりする程度で、実務者として何かをするわけではありません。
実務者の采配や、事務的な仕事をしています。
マンションを一つの会社と例えるならば、フロントマンは秘書です。
理事長が社長です。
副理事長が副社長です。
監査役がいて、その他の理事がいます。
役に就いていない人は、平社員です。
秘書(フロントマン)の仕事は、資料をまとめて、社長に報告するのが仕事です。
社長が的確な判断ができるよう、資料をあつめるのです。
そして社長が判断をします。
或いは、忙しい社長にかわって外部の業者さんと打ち合わせて、ヒアリングをします。
そういう「裏方」的な立場です。
フロントマンのお仕事一覧
では、フロントマンの、実際の仕事をご紹介します。
【事務所でのお仕事】
作業の早さ・そして正確性が求められます。
- 各種見積の取り寄せとその精査
- プレゼン資料の作成
- 業者からの各種報告書の精査
- 会計プランの立案
- 設備修繕プランの立案
- 組合活動記録の作成
- 管理規約(マンションのルールブック)の素案の作成や改定
- マンションの活動指針、運営方針、ルール等の素案の作成や改定
- マンション共益費(俗に管理費と言われているもの)の、未納者への督促
事務方の仕事です。
パソコンとにらめっこする感じです。
【理事会・総会の運営サポート】
多くの知識と問題解決能力、それらに基づいた適切な助言が求められます。
また、情報を正確に伝える的確なプレゼン能力も必要です。
- 理事会や総会の設営(出席者のスケジュール調整や会場の予約など)
- 総会の出欠通知のとりまとめと報告
- 理事会や総会への出席、アドバイス(質疑応答あり)
- 理事会や総会の議事録の作成
理事会や総会の主体は、顧客(管理組合)にあります。
しかし、多くの顧客はマンション管理に対して素人。
そのような背景から、プロであるマンション管理業者が黒子となり、実質の運営を担うケースが多いです。
【顧客や関連業者との折衝業務】
対人能力、要するに営業さんと同じスキルが求められます。
- 協力業者への指示(日程調整や、品質の監査)
- 地域住民(自治会など)との折衝
- 官公庁との折衝
- 住人との折衝
現職が営業職の人であれば、すぐに対応できそうですね。
【管理員のマネジメント】
60歳を超えたおじいちゃんを部下として采配する、人間的魅力が求められます。
- 勤怠管理
- 日報などの、報告書の確認
- 業務指導(清掃指導もあり)
- 顧客対応など、管理員業務の指示・命令
世の中にはいろんなおじいちゃんがいます。
人の話を聞かない人もいれば、人の話が聞こえない人もいます。(耳鼻科的な意味で)
彼らの上司となって、マネジメントを行います。
【その他】
- 緊急対応窓口としての機能
- 住人間トラブルの仲裁 ※本来は契約業務範囲外ですが。
俗にいう『クレーマー対応』。
これは、正式な業務範囲ではありません。
管理会社は、マンションの運営をプロとして預かっているのであって、人間関係の仲裁を業務としているわけではないから。
というのは建前の話。
マンションは結局、人付き合いです。
住民同士の仲がいいマンションはとても住みやすいマンション。
どんなに設備面で居心地がよくても、お隣さんが気に入らなければそれだけで住みにくいマンションです。
円滑な人間関係を構築する手助けができる。そういった人間的魅力にあふれ、上手にとりなしてくれる。
それが良いフロントマンであると思います。
フロントマンに求められる知識・スキルについて
業務は上に上げた通りです。
では、それらを遂行するために必要なスキルはなんなのでしょうか?
あとついでに、フロントマンという業務につけば、どのようなスキルが身につくのでしょうか?
法令の知識
- 民法
- 区分所有法
- 建築基準法
- 消防法、など。
よく登場する法令は上記かな?
会計の知識
マンションの会計情報を、顧客へ報告しなければなりません。
しかも、報告するだけではありません。分かりやすく解説しなければなりません。
つまり、経理的な知識とその理解、さらにそれらを「わかりやすく解説する能力」が必要です。
具体的には、貸借対照表、収支報告書、予算書、合計残高試算表、総勘定元帳などの会計書類を読み解く力が必要となります。
また、仕訳(貸方、借方とか、そういうやつ)も理解しておかなければなりません。
ただ、通常、そこまで深い知識はいりません。
(簿記3級程度があれば、実務面では十分です)
建築設備に関する知識
マンションはコンクリートの建物です。
マンション管理会社は、業務として『それを維持管理する』という使命があります。
適切にメンテナンスをしなければ、マンションはボロボロになってしまうからです。
「どんな不備があり、それに対してどのような対処が必要なのか」
的確に判断し、提案できる知識が求められます。
パソコンに関する知識
フロントマンには、通常、パソコンが1台与えられます。
ワード、エクセル、パワーポイント。必ず使います。
ショートカットや関数など、オフィスソフトに精通した社員の仕上げる資料は見た目にも見事ですし、それだけではなくて、やっぱり仕事が早いです。
入社してからも教えてもらえるでしょうが、もし、本格的に習った事が無いのであれば、ちょっとパソコン教室にいってみても良いかもしれません。
むちゃくちゃ詳しい必要はないですが、知っているに越したことはないかと思います。
単純に、仕事も早くなります。
文章作成に関するスキル
フロントマン、とにかくひたすら資料を作ります。
一日中、パソコンで文字打ってることもざらです。
日本語を書く能力。議事録を作る能力。資料をまとめる文章力。
「お手紙が書ける程度」の文章力があれば十分で、小説家のようなスキルは求められていません。
(いわゆる、魅せる技術、は不要です)
が、最低限、「読めば伝わる程度の技術」は求められます。
大学で、卒業論文がそれなりに書ける程度のスキルがあれば十分かとは思います。
フロントマンの一日
ほとんどは事務作業です。
一日中、事務所の中でパソコンで資料を作成しています。
「マンションで掃除をしている人」のことを、「マンション管理の仕事をしているフロントマン」
という認識がありますが、これは誤解です。
フロントが、マンションで掃除をしていることは、ほとんどありません。
7割は、事務作業。
3割くらいは、マンションで、点検や、打ち合わせをしています。
ただし、どの程度の配分か、は、会社によります。
5割以上、現場にでているフロントもいるみたいですし、逆に、1日中を事務所内でパソコン仕事にあてている社もあります。
おわり
おおむね、こんな感じです。
一言で表現するなら、「マンション運営のプロ」というイメージですね。
仕事内容は、「会社が違えどほぼ同じ」、というケースが多いです。
なので、一番のメリットは転職がしやすいです。
(割と簡単に同業他社へ転職ができる感じがします)
また、比較的、巨大企業が多い業界ですので、どちらかというと、安定志向の高い方にあっているのかな、という気はします。