分譲マンションの管理組合と、フロント現場担当者向けのお話です。
インターネット提供会社(NTTやNURO光、au光など)や、ケーブルテレビ会社。
または、地域電力会社やガス事業者より、「サービスの説明会をしたい」という提案をされることがあります。
ほとんどの場合、まずは管理会社へ業者から提案があり、管理会社経由で理事会へ提案が届きます。
会社によっては対応を決めているところもあると思いますから、その場合はそちらに従ってください。
ちなみに、我社では本件に関する正式な対応マニュアルはありません。上司先輩から指導を受けるのみです。
目次
なんのために説明会をするのか
インターネット提供会社の場合は、「インターネットサービスを説明し、契約者を募集するため」です。
多くの場合は、インターネット提供会社が直接行うのではなく、提携会社(下請けのような会社)が説明会を行います。
マンションの管理会社が提携会社となり、説明会を行うケースもあるかもしれません。
ケーブルテレビもインターネットと同じように自社サービスへの勧誘目的ですが、こちらは、提携会社といったものではなく、ケーブルテレビの事業会社が直接自社社員を派遣して勧誘を行うケースが多いのではないかと思います。
地域電力会社、ガス事業者の場合は、エネルギーの自由化に伴い電気契約、ガス契約をすることができるようになりましたから、契約のために説明会を希望することがあります。(このところはもう一通り落ち着いたので、もうないかなあとは思いますが)
また、特にガス事業者の場合、ガス機器の展示会を行い、ガス機器やリフォームの販売機会とするケースもあります。
このように、基本的にはサービスへの勧誘目的で説明会を開催します。
説明会のパターンは大別して2つ、住民にメリットがある説明会と、特にない場合
説明会は、業者がサービスへの勧誘目的で開催することになります。
「説明会を開催すれば●●のようなメリットがありますよ」と、特別な機会をもって説明会の開催を希望するパターンと、「全くなにもないけど説明会をさせてほしい」というパターンがあります。
メリットがあるパターンの場合
メリットがある場合、とは、例えば、「説明会開催を条件に、インターネットサービス料を安くする」などのケースです。
この場合は、一応、事前に「説明会の開催がなくても安くできるんじゃあないの」的な交渉はしますが、そんなぬるい交渉に乗ってくるような会社はまずありませんから、やはり説明会の開催を前向きに考えることになります。
管理会社側として、理事会に持っていく前に確認しておくべき点は以下です。
- 詐欺的な会社、内容ではないか
- 説明会の中で、過度に電気や水などを利用しないか(やりすぎるようなら別途請求すること)
- 大きな音は出さないか(住民・近隣への配慮)
- 単独では管理員室内には立ち入らせない、鍵も渡さない(トイレが管理員室内にあるなら、誰かの立ち会いなしには使わせない)
- 日程の確認(説明会当日は、イベントや点検と重なっていないか)
- 鍵の貸し出しの有無と、必要であればその方法
- 説明会について、管理組合は場所の利用を許可するのみで、運営は先方に全責任をもたせる
ほかにもあるかもですが、思いつくのはこのくらいです。
提案資料もよく確認して、特に問題がなさそうであれば、理事会で決議のうえで、説明会の開催を行うことになります。
管理組合の、説明会への対応
通常、理事会での決議は説明会の開催を許可する程度で、細かな業者との打ち合わせはフロントに全部任せることになるでしょう。
事務的な打ち合わせは管理会社に任せればよろしいのではないかと思います、管理会社はその手のプロなので上手にしてくれるかと。
管理組合の立場として最も大切なことは、説明会は場所の利用を許可するのみで、細かい運営には関与しないこと、です。
つまり、説明会への参加や、契約の是非については個人の自由意志に任せ、管理組合は関知しない。契約が安い、高いについても判断しない。(最安値を探せばおそらく他にもあるでしょうからキリがありませんし、最善の価値観も人によって様々です。その責任を管理組合が負う必要もありません)
管理組合からお知らせはしたほうがいい
ただ、説明会を開催することを許可する場合、住民に説明会そのものを不安視させることは望ましくありません。
開催を許可した管理組合として、説明会が管理組合の承諾のもと行われているものである、ということは責任を持って広報するべきです。説明に来てくれる業者に対しても失礼ですし。
ですから、業者からの説明会開催の案内とは別に、管理組合から書面を配付しておいたほうが良いです。
事前ヒアリングの内容(どんな条件でメリットが有るのか、など)は、箇条書きくらいでよいので、お知らせしておくと、お互いの手間が省けてよろしいでしょう。
あと、たとえばインターネットの説明会であれば、「契約や説明会への参加は各人の自由であること」を明記し、管理組合には責任がないことを明確にしておきましょう。
「全くなにもないけど説明会をさせてほしい」パターンの説明会
管理組合(および管理会社)は、特定の企業の支援を行わないのが原則です。
どのようなサービスを選択し、どのような生活を送るかは居住者に委ねられるものだからです。
そのような考えから、特にメリットがない説明会の開催についてはお断りするケースが(私は)多いです。
理由は大きく分けて2つです。
- 勧誘に関するトラブルが想定されること
- 説明会の開催にも一定のリスクがあること
過度な勧誘などのトラブル
説明会を開催する場合、集会室やエントランスを利用することになるのですが、やはり、過度な勧誘があるなどのトラブルは想定されます。
エントランスに業者が経つことを嫌がる居住者もいます。
断れないタイプの方はそれだけで嫌だなあと感じたりするようです。
管理組合側のスタッフが不在
説明会は、通常、休日に行います。
土曜日はともかく、日曜日や祝日は、管理員が勤務しているケースはまれです。
管理員がいない場合は、説明会を監督する管理組合側の人員がいません。
となれば、万が一、備品が破損していたりしても誰がいつ、ということはわからないので、相手方には請求できない可能性が高いです。
もちろん、管理組合の理事メンバーが立ち会うようであれば構いませんが、説明会は1日中開催されていたりしますし、常時立ち会いは困難です。
また、先と同じ理由で、管理員がいない場合は、オートロックの内部にはいることができません。となれば、鍵を貸し出す等の対応が必要になるのですが、鍵の管理をどう行うか、などの問題があります。
通常、「エントランスだけが開く鍵」というものがありますから、事前にその鍵をお渡しする方法で解決となるのですが、その授受にも一定の手間がかかりますし、管理責任もあります。
簡単に、というわけではないです。
管理員を特別に派遣するのであれば、その費用を組合が負担するのか、業者に負担してもらうのかの打ち合わせが必要です。
特にメリットがないようであればお断りが良い
以上のように、説明会の開催にも一定の手間がかかること、そしてリスクもあることを考えると、何らかの住民メリットがないようであれば、説明会を開催する必要はないと私は判断します。
「チラシ等でご案内いただければ、必要な方はご連絡なさると思いますよ」とお伝えし、特に組合にも通さずお断りするケースが多いです。
説明会の場所代を取るか
セコセコした話になりますが、説明会をするにあたり、パソコンの電源、エアコン、照明、トイレの水道などの利用をすることになります。
また、集会室などのスペースを利用します。
交渉の一つとして、場所代的なものを業者に請求することは可能です。
相手方も請求された経験があるはずなので、特に違和感なく話は聞いてくれると思います。
また、管理組合から住民への説明の方法の一つとして、「収益が得られるので開催を許可した」という理由があれば、それは多くの方にとって納得のゆく理由となるはずです。説明会の開催に否定的な方にも、一定の理解が得られるでしょう。
費用は、1日数千円程度(3000円~5000円)が妥当で、高くとも1万円程度かとは思います。
または、集会室等に利用規定があり、そこに費用が定められているようであれば、それに従えばよいです。
費用を徴収するのは、利益を得る目的ではなく、あくまでも住人の納得感を得るために行うもの、という認識のほうが上手に話が進むと思います。企業側としても、そうそう高い費用は支払えないでしょうから、いくらかでも回収できればそれでよしとするくらいに考えておきましょう。
おわり
まとめると、
- 住民にメリットがなければお断り
- メリットがあれば開催、ただし詐欺的な会社でないかは重々注意すること
で、よろしいのではないかと(私は)思います。
最終的にはご自身でご判断を
あくまでもこれは私のやり方、考え方のご紹介です。
説明会もお金かからないんだったらガンガンやればよろしかろう、という考え方の方もいらっしゃるでしょうし、それはそれで間違いではありません。
話を聞かなければ契約をしない、という方もいるでしょうし、説明会が良いきっかけとなるケースもあるはずです。
私の話は参考程度に捉えていただき、実際には業者からよく話を聞き、要否は皆様ご自身でご判断ください。