AEDとは、日本語で言うと『自動体外式除細動器』のことを指し、略さずに言うと、
Automated=自動
External=体外式
Defibrillator=除細動器
の、それぞれの頭文字をとってAEDと呼んでいます。
AEDって何?細動ってなんだ?
そのあたりの詳しい事は、バッチリまとめられた良いサイトが調べればたくさんあるので、そちらでお願いします。
ここでは、『AEDが何かは分かっている。それをマンションに導入すべきか?』という視点でブログ書きます。
↑とりあえずこういうやつだよ!
目次
先に個人的な意見だけ書いておきますと、AEDは「あったほうがいい」と思っています
理由は後述しますが、いずれにせよ、個人的には「あったほうがいい」と考えています。
まあもちろん。
あった方がいいとはいえ、そこにかかる費用面のコスト、教育、効果性の検証など、いろいろと反対意見は出せば出るのですが。
百万回に1回でも大切な人の命が救われるのならば、集合住宅に設置するコストとしては決して高くない。
と、思います。命はお金に代えられない。これに尽きる。
日本はそれが許される、恵まれた国なのです。
AEDがどれくらい活用されてるのか、という視点の話
AEDの年間の使用回数は、総務省の発表によると平成26年度で約1000回程度だそうです。
全国に50万台くらいのAEDが設置されている(らしい)事を考えると、その使用率は0.2%。
この数字が高いか低いかは別の問題として。
【根拠資料】
一般市民がAEDを使用し除細動を実施した傷病者は 1,030 人であり、そのうち1ヵ月 後生存者は519 人、1ヵ月後生存率は50.4%である。
心肺蘇生を実施しなかった場合の1ヵ月後生 存率 8.4%と比較して約 6.0 倍高くなっている。
また、一般市民がAEDを使用して除細動を実施 した傷病者のうち、1ヵ月後社会復帰者は446 人、1ヵ月後社会復帰率は43.3%であり、心肺蘇生 を実施しなかった場合の1ヵ月後社会復帰率4.3%と比較して約10.1倍高くなっている。
上記資料を読んでみると、どうやら、AEDを使った場合の効果は劇的。
何もしない場合と、AEDを使った場合とで比較して、8.4%⇒50.4%と驚異の生存率。
社会復帰率も4.3%⇒43.3%と大幅アップ。
ただ、この数字はAEDだけの機能というわけではないはず(心臓マッサージの併用等、他の要因もあるんじゃ?と懐疑的)なので、鵜呑みにしない方がいいような気がしないでもないのですが・・・。まあ、AED一定の効果はある事は間違いない。
倒れた人に対するAEDの使用率的な話について
対して、じゃあ、あなたがポテっと倒れた場合に、AEDを使ってもらえる確率ってどんなもんなのかというと、
平成26 年中に一般市民が心原性心肺機能停止の時点を目撃した傷病者は2万5,255 人であり、一 般市民が心肺蘇生を実施した傷病者は1万 3,679 人(54.2%)である。そのうち1ヵ月後生存者は 2,106 人、1ヵ月後生存率は15.4%であり、心肺蘇生を実施しなかった場合の1ヵ月後生存率8.4% と比較して約 1.8 倍高くなっている。また、一般市民が心肺蘇生を実施した傷病者のうち1ヵ月後 社会復帰者は1,476 人、1ヵ月後社会復帰率は10.8%であり、心肺蘇生が実施されなかった場合の 1ヵ月後社会復帰率4.3%と比較して約2.5 倍高くなっている。
とのこと。要約すると。
心停止したところを一般市民に見つけてもらえた患者は約2万5千人。
AEDの年間使用回数は1000回程度なので、全体の約4%の人がAEDを使ってもらえてる計算に。
(倒れても誰にも見つけてもらえなかった数字は除外だよこれ)
この数字をみて高いか低いか、どう感じるかはひとそれぞれ。
間違いなく言える事は、AEDが機能する確率は高くない。
マンションに『あれば助かる』ってな単純なもんではない事は確か。
それでも、それで救われた命があることも間違いない。
そしてその命があなたの子供だったとしたら。
少なくともそう聞かれれば無下に「イラナイ」とは言えないハズ。
何故マンション内にAEDを設置した方がいいのか
マンションに限定して掘り下げて考えてみます。
AEDで電気ショックを行うにあたり、成功率は時間の経過と共に落ちると言われています。
3分経つともうだめ、とか、そういう話です。
この話のポイントは、『救急車が到着するよりも早く処置をしなければ間に合わない可能性がある』という事実です。
救急車が到着するのを待っていたのでは間に合わない、だから身近にAEDを設置する必要がある、というわけです。
そして、身近という言葉がどの程度をもって身近なのかという話については、厚生労働省がこのようにおっしゃっておられます。
コペンハーゲンの調査では、住宅地域では100m間隔でAEDを設置する事が推奨されるべきであるとしている。
AEDの施設内での配置にあたって配慮すべきこと
現場から片道1分以内の密度で配置
マンションという特性上、もし、家族が自宅で倒れたとしたら、AEDを取りに行くために廊下・階段を走り抜けなければなりません。
それをタイムロスを考えると、もし、マンション内にAEDが設置されておらず取りにいかなければならないと想定した場合、マンションの真横にAED設置場所がないと効果が薄いと認識するべきです。
だって3分でAED使わないといけないんですよ?
信号待ちなんてしてられません。
本当に1分1秒を争うときですから、結局、『マンションに設置する』くらいの距離感覚でないと効果的な運用ができない。
⇒AEDの恩恵を受けたいのならばマンションにAEDを設置しないといけない。
とまあ、そういう結論になるわけです。
よくあるAED導入反対意見についての個人的な感想
管理組合での導入事例について、ないわけではないですが、あまりないです。
私自身が管理組合でアンケートをとったこともあるのですが、賛成派2割、反対派4割、どっちともいえない派4割、くらいのような肌感覚です。
明確に「AEDは公共の施設に設置するものであって、マンションで持つようなもんじゃない」という意見が届く事もあります。
何が正解か、という回答もないので、マンションで話し合って決めるしかないとは思います。
その一つの参考になればと思い、よくある反対意見について考察を。
ケース1 お金足りません問題
規模が大きなマンションだと、AED導入は比較的スムーズですね。
ありていに言って、マンション全体の支出からみるとAEDの費用はごくわずかだからです。
AEDの導入費用は、約5,500円/月くらい。
例えば、総戸数が200戸のマンションですと、戸当たりで月27.5円。年間でも330円くらい。
ね?これくらいなら、あえて声高に反対する人も少数派。
が、規模が小さいとそうはいきません。
20戸規模のマンションだと、戸当たりの負担はその10倍。
月々275円の費用を支払え、となると、とたんにハードルが高い。
この問題は、費用対効果の話なのかな、と思います。
『AEDにいくらまでなら出していいのか、出せるのか』という視点で、マンションで話し合って決めてください。
なお、前提条件として、『マンションにもAEDはあったほうがいい』という合意のもとで話し合うと、建設的な意見交換ができるはずです。
「要るか要らんか」や、「欲しいか欲しくないか」みたいな話の出し方をすると、「他人のことなんてしらねぇよ」って意見がでてくるのであまりよろしくないです。
マンションの健全なコミュニティ形成という面からも、「あったほうがいいけど、お金がね?」的な話し合いをお勧めします。
最終的に導入を見送る事となったとしても、防災意識が高まる一つのきっかけには出来ると思います。
ケース2 そんなもん個人が本当に使えるのか問題
何でもそうですが、やってみないとわかりません。
AEDもそうです。使ってみないとわかりませんよ。
AEDのフタを開けると、機械が喋って何をすべきか教えてくれるので、とりあえず知らなくても使えるようになっています。
また、AEDには自動診断機能もあるので、電気ショックが必要でない方に使おうとしても電気ショックがされない仕組みです。
更に、多くのAED取扱店は、AEDの導入時に無料でマンションに来て講習会を開いてくれます。
行政でもAEDの講習は、ちょくちょくやってます。
※お住まいの地域の市役所に電話して聞いたら詳しく教えてくれます。
『AEDを導入する事』を機会に、マンション全体の危機意識を高める事は、もしかしたらAEDがマンションにあること以上に重要な事、なのかもしれません。
それと、AEDはAEDだけで助かるわけではなく、人工呼吸や心臓マッサージとセットです。
『マンションにAEDを導入する、しない』という話とは一旦切り離して、あなた自身が救命とどう向き合うか、という問題として、AEDを含めた救命技能は習得しておくに越した事は無いと思いますし、定期的な再講習も受けるべきです。
人の命がかかった一大事です。誰かが倒れた時にたまたま医療関係者がいて、たまたまAEDがあったから助かった、なんて幸運だって期待しないと人の命なんて救えない、と、私は思います。
一般人が使えるのか使えないのか、という論点は、そもそもピントがちょっとだけずれている、と認識しないといけない、のかもしれません。
ケース3 メンテナンスの不安
- 点検しないといけないの?
- 部品交換しないといけないの?
- 壊れてたらどうするの?
- 盗まれたらどうするの?
- 一回使ったらそれで終わりなの?
- マンションで買っていいの?
- 管理規約に書いてないよ?
的な話については、全部まとめてAED販売店か、管理会社の人に聞いて下さい。
それで概ね解決するでしょうから。
なお、AEDはレンタル契約をお勧めします。
買い取り契約の方が総額は安いのですが、何かと面倒なので。
AED付き自販機の導入というちょっと強引な手法
とりあえずAEDが良い事は分かった。
あった方いいかもしれない。
でもその費用をマンションで負担するのは合意形成が難しい・・・。
欲しけりゃ自分で買えって言ってる人もいるし。
という話に対する一つのアンサーとして、AED付き自販機の導入があります。
自動販売機を設置してくれたら、無料でAEDの設置したげますよ、という自販機屋さんのセールストークです。
個人的な思いとしては、自販機屋さんのセールストークに騙されるな、となりますが、組合員を強引に説得して導入したいなら一応アリです。
何故強引なのか、という話について少し触れますと。
そもそも自動販売機をマンションに設置すると、管理組合への収益があります。
例えば、1ヶ月で10,000円の収益のでる自動販売機があったとします。
自販機屋さんは、『10,000円の収益が4,500円になるかわりに、5,500円のAEDを無料でプレゼントします』と言っているのです。
ああ、うまいことしやがって!って思います。
自動販売機の設置とAEDの設置。
一旦AEDとは切り離して、『自販機の設置自体を歓迎するか否か』という視点で考えて、自販機あったほうがいいね!となれば導入検討をしていいと思います。
ちなみに、自動販売機にAEDがセットされるメリットは、
- AEDをメンテナンスする手間が不要
- AEDを設置するための箱が不要
- AEDを自販機内に置くので屋外でも設置できる
- 自販機屋さんから好条件を引き出せるとお得
特に4については、自販機屋さんと交渉が出来て案外いい条件で導入してくれることもあるので、一概にセールストークと切り捨てる様な話でもないのですが。
ただ、管理組合でAEDが要る要らん、自販機が要る要らん、という複数の視点でもめると収拾がつかずにしっちゃかめっちゃかになる可能性もあるので、自販機付きAEDの話を出すのは少し危ういとは思います。
自分のマンションに自販機あったら便利ですけどね。
思ったほど空き缶も散らからないですし、中高生のタマリバ的な話も思ったほどありません。
(賃貸マンションにはオーナーが自販機を設置していますが、多くは特に問題ないです)
ですが、一定のリスクはつきもの。
導入する前に意見が錯綜して建設的な話し合いができなくなるリスクと、導入した後にマンションが荒れるリスクと。
しっかり話し合っておかないと、「あの人が言ったから導入したのに」と、誰かが悪者にされてしまうかもしれません。
最後に
一番いいのは、AEDは1住戸に1台を持ち、更にマンション1フロアに1つ設置することです。
しかし、それでは費用対効果の面で効率が悪すぎますし、そんなの頭悪すぎます。
どんどんと住みやすくなる社会。
その現在の世の中の流れとして、『効果性の面から、要所要所にAEDを置くと良いよね』という大きな流れがあり、実際に公共機関等には設置が進められています。
その『要所要所の中にマンションを含めるのか否か』という点が大きな論点でしょう。
このブログはAED導入賛成派の意見で書きましたが、世の中のマンションにはほとんどAEDが導入されていません。
また、今後もこの流れは変わらないと思います。
更に、AEDがマンションにあったから何かが劇的に変わる様なこともありません。
なければないで過ぎていく程度の話です。
AEDの検討は、AEDをマンションに置くかどうか、という事を話し合うという事がポイントなのではなくて、その本質的な論点は『マンションの自治的な防災をどうしたいのか』です。
AEDはその大きなくくりの議題のなかの、一つの協議事項に過ぎません。
『AEDを導入したから、講習もしないといけないよね』
『講習するんだったら、みんなに参加して欲しいよね』
そういう気運がないのであれば、置いただけになってしまいます。反対の方のよく聞く意見通り、AEDって価値ってあるの?です。
ピンポイントでAEDの導入の是非だけを話し合うのは、ちょっと無理があるんじゃないかなあ、と思います。
(そしてそういった話し合いは、だいたい反対派多数という決着です)
AEDの導入がマンションの防災を話し合うきっかけになれば最高ですよね。
そして、そういう話のもって行き方が出来る様に、マンション内でのコミュニティの形成をしたいものです。
AEDがあるから、ないから、ではなくて、そういう話し合いが出来るマンションって、とっても住みやすいですよ。
そんな分厚いコミュニティは望まない方もいらっしゃるのが難しいのですけれどw
私のマンションでは去年春AEDを付けました。220戸で出入り口が2ヶ所なので最低限ということで2個設置しました。一昨年AED自販機の売り込みがあった際のアンケートではAED設置賛成だが自販機反対が過半数でしたが、その後消火・避難訓練で消防署が器具を持ち込み熱心に体験訓練させてくれたので、管理組合負担で導入することになりました。勿論導入時には設置(レンタル)会社が訓練指導をしてくれました。マンションの付加価値という言葉も効果があったかもしれません。
200戸を超えるとかなりハードル下がりますね!
人数が集まれば講習会もマンションで開催できますし。
大きなマンションは何かとお得だなーと常々思います。
良く手入れのされたマンションは買い手も付きやすいですしね!