結論からの話になりますが、マンションで落とし物を拾ったら、
- 管理員に届け出る(管理会社へ届け出る)
という対応が正解です。
管理員に会えるのならば手渡しをすればいいですし、会えなければ管理会社へ連絡しても良いです。
あとは、彼らが適切に処理をします。
と、言ってしまうと話が終わっちゃうので、法令について少し書いてみます。
落とし物を拾った時のルールについて
拾った落とし物についてのルールは、遺失物法に定められていますので、この法律を紹介します。
落とし物を拾ったときは、拾った人の義務として、以下のことが定められています。
遺失物法第4条
拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
翻訳すると、『落とし物は持ち主に返してあげるか、警察に届けてね』と書かれています。
※用語解説
「習得者」とは『拾った人』のこと。
「遺失物」とは『落とし物』のこと。
「物件」も遺失物と同じく、『落とし物』のこと。
「占有」とは、『所有している状態』をさします。
マンションの場合
ただ、マンションや、或いはスーパー、学校、駅舎などの、いわゆる『建築物』で持ち物を拾ったときは、上記の定めではなくて別の対応が必要ですよ、ということが、以下に書かれています。
遺失物法 第四条第二項
施設において物件(埋蔵物を除く。第三節において同じ。)の拾得をした拾得者(当該施設の施設占有者を除く。)は、前項の規定にかかわらず、速やかに、当該物件を当該施設の施設占有者に交付しなければならない。
翻訳すると、『マンションで落とし物を拾ったら、まずは管理している人に渡してね』と書いてあります。
※用語解説
「前項」とは、先ほど引用した法令のことです。
「施設占有者」とは、マンションの管理者を指します。
マンションの管理者とは、本来、「マンションの理事長」のことですが、その事務はおおよそ管理会社が代行していますから、つまり、『落とし物は管理会社(管理員)に届け出る』という行為が正解、というわけです。
そして、それを受け取った施設管理者の対応に関する規定も以下にて定められています。
不特定かつ多数の者が利用する施設における掲示
遺失物法 第十六条
施設占有者のうち、その施設を不特定かつ多数の者が利用するものは、物件の交付を受け、又は自ら物件の拾得をしたときは、その施設を利用する者の見やすい場所に第七条第一項各号に掲げる事項を掲示しなければならない。
第七条第一項各号とは、
一 物件の種類及び特徴
二 物件の拾得の日時及び場所
を、さします。
翻訳すると、『落とし物の種類と特徴と拾った日時と場所を掲示してね』と書いています。
落とし物を警察に届ける場合
さてさて、警察に届け出るときのお話しです。
まあ、基本は特に何も気にせず交番に持って行くとOKです。
もって行くと、係の方が受付票を書いてくれます。
その時、
- どこで拾ったか
- 住所、氏名、連絡先
- 何月何日の何時何分に拾ったか
- 落とし主が見つかったら、届出者(あなた)の氏名住所連絡先を伝えてよいか
- 落とし主が見つからない場合、拾得物を引き取るか否か
を、聞かれます。
あれやこれやと聞かれて、結構時間かかります。
30分くらいかな?
そして、いくつか注意点。
『落とし主が見つからない場合、拾得物を引き取るか否か』を聞かれる、と書きましたが、これが適用される、つまり落とし物を自分のものにできるのは、
- 個人の場合は24時間
- 施設占有者の場合は1週間以内
に、申請した場合のみです。
以下がその根拠。
費用請求権等の喪失
第三十四条
次の各号のいずれかに該当する者は、その拾得をし、又は交付を受けた物件について、第二十七条第一項の費用及び第二十八条第一項又は第二項の報労金を請求する権利並びに民法第二百四十条若しくは第二百四十一条の規定又は第三十二条第一項の規定により所有権を取得する権利を失う。
一 拾得をした物件又は交付を受けた物件を横領したことにより処罰された者
二 拾得の日から一週間以内に第四条第一項の規定による提出をしなかった拾得者(同条第二項に規定する拾得者及び自ら拾得をした施設占有者を除く。)
三 拾得の時から二十四時間以内に交付をしなかった第四条第二項に規定する拾得者
四 交付を受け、又は自ら拾得をした日から一週間以内に第四条第一項又は第十三条第一項の規定による提出をしなかった施設占有者(特例施設占有者を除く。)
翻訳すると、『落とし物は早くもってこないとあげないよ』ということ。
そのあと、3ヶ月くらいたっても持ち主がでてこなければ、落とし物を頂く権利が得られます。