管理員さんのあれこれです。
前提について。
データをあれこれみる機会があったので共有します。詳細は雑にぼかしています。グラフをつけましたが、結論に影響のなさそうな範囲で適当なダミーデータ入り。
なおグラフのデータは管理員や清掃員、あと、様々な事情で雇用しているパートタイマーからの抽出。(全部まとめて、ここでは単に「管理員」と呼びますが、実態は、個別の事情でいろんな人がいます。管理員清掃員じゃない人も含まれたりしていますが、そこは細かく整理していません)
入社時の年齢について
2010年以前の入社時平均年齢は60歳前後。
そのまま順調に上がり、2015年ごろから65歳。
近年では68歳くらい?です。
雑なスクショですが、グラフにするとこんな感じの伸び。(移動平均線で見てるので、実際より少し遅れています。超右肩上がりであることがわかっていただければそれで伝えたいことは伝わってます!)
もうそろそろ70歳に手が届きそうです。
法律の細かい背景はろくに調べていませんが、雇用延長が努力義務になったりの影響が強くあるのでしょう。
更に。
そろそろ70歳まで働く環境であることを考えると。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000694689.pdf
2026年には、入社時の年齢が、68~69歳前後になっていると思います。
で、2030年ごろには71~72歳くらいかな・・・。
だいたい、みんな、退職して1~2年遊ぶので。(国が貧乏になると、もしかしたら、退職してゆっくりする勢が減るのかもしれませんが・・・今のところは数年はゆっくりする方が多い印象。家庭の整理とかもありますし、これは変わらないと思っていますがどうでしょうね)
管理員さんは何歳まで働けるのか
精神面、身体面、個人差、その他の細かいことは除いて抽象化すると。私が見る限り、72~73歳くらいで、「グッと老ける」感じです。
別段、トラブルがあるとか、これ以上働いてると無理が出そう、とか、なんかそういう具体的な何かがあるわけではないのですが。
72歳前後を超えたあたりで、身体的に、「重いものが持てない」とか「持ててもグラつく」とかがそういうのがあって、任せられない仕事が増える傾向にあります。(掃除道具とかもってフラついて車にあてる、とかが。というか、車でなくても普通に壁にブチあててる、とかは、まあ、割と・・・)
そして、精神面も顕著に(いろいろな)低下がみられます。指示事項が聞けない(忘れるというより、単に能力低下で複雑な指示や新しいことへの対応ができない)、休憩時間の大幅な増加、などなど。
それでも、70歳以上の方も、概ね安定して、また特別に大きなクレームもなく働けているのが実際なのではないかなと思いますが。
個人的な感覚としては、「長く働いているので、住民側もそれに慣れている」「管理員業務のベテランなのでポイントを押さえて仕事ができてて表面的な品質はそこまで低くない(ただし裏でフロントが補助しないとつらい)」というのが関係していそうに思います。
あと、ご老人なので、やはり、気持ちの面で手加減してくれる方が多い気はします。
そういう事情なので。今後、例えば72歳の方が「新人」として派遣されて、満足できるレベルで対応できるのかはよくわからない。(いやまあギリギリ行けると思うけど、何年働いてもらうの?問題は残る)
実体験として。長く付き合っている管理員さんもぽつぽついますが、自分と同じレベルで対応してくれるくらいであると信頼を置いていた方だったけれど、年齢が高くなってその信頼が揺らぐ、というのもあったりなかったり。
現在の品質確保を主に考えるのであれば、72歳が会社として上限と判断する年齢の合理的なラインだと思います。
とはいえ。そんなこと言ってると人いないよ、というなかで。
75歳くらいが、2030年前後を目途としたラインの設定なるのではないでしょうか。75~80歳については、「状況次第では雇用を継続する」という感じ。それを積極的に「ええやん行こうぜ気にするな!」でやるか、選択肢がないことを理由に仕方なく後ろ向きに選択するのかは、、、おそらく会社次第かな。
75歳で応募があった方を新しく雇用するかどうかは状況次第だけれど。(本音はそれはあんましたくないけれど、、、いよいよになったらするんじゃないかなあ)
あと、未確定な事項として。
昔よりも、みんな元気です。なんか、70歳って、昔(昭和の時代?)の50歳くらいの感覚じゃないでしょうか。精神的にも、肉体的にも。
それが加速して、「80歳でも元気」みたいな時代が来るかも?というのは、もしかしたらあるかもしれません。
管理員さん年齢の感想
管理員の人手不足について。
今までは、「72歳までは、業務品質的に特別な問題がなかった。また、それを超えても継続する限りにおいてはトラブルはそう発生していない」ことを理由に、個人的には「管理員のなり手不足」という問題に対して、そう強いリスクと認識していませんでした。
それはどうとでもなるやろ、の範囲。
が、2025~2030年くらいから、「割とどうしようもない」状況に追いやられそうな気がしています。それで、全国的に、徐々に品質の低下がみられるのでは、と考えています。(いままではそう品質は下がってなかったと思う。特殊な状況を除けば、組合側が歩み寄れば十分に解決できていたはずなので)
2030年を超えるころにどうなっているかは予想できませんが、今のところ見えている状況から想像すると。
・管理員派遣時間を削減。受付業務はやめていく方向で。
・清掃業務の品質については、業者による機械洗浄やスポット清掃の増加で担保。
・積極的な、副業層(主婦層や学生層。そしてフルタイムの方の副業はむしろ歓迎したい)の受け入れ。(土日の派遣を積極的にやりたい)
・総じて、これらに対応するための管理員派遣費用の単価上昇(会社経費があがるから)
というあたり、徐々に、そして本格的に取り組まなければならない気がしています。
主婦層、学生層については世の中的に競合のお仕事が増えているのであまり強い期待はできませんが。間口を広げる、というのが主な話。現状の業務を少しでも追加して負担する道があればそれでよいので、まあこの辺は各社というか、采配する部署や個人技の技量次第、というところはある気はします。フルタイムの副業層については未開拓のエリアなので、これは強く期待。
受付をやめてしまえば、シンプルに、外注するという決断をして品質を下げてでも「とりあえず人間を派遣する」を確保することができるので、、、まあ、そういう方向が管理会社にとっては一番お手軽な判断かな。顧客にとってはあまり良い選択とは言えませんが。
そんな感じで。管理員での受付をやめたい(というかどんどんできなくなってる)という点から、一層、webでの情報管理、つまり本社等の専門部署での一括管理が強く求められると思います。とっととインターネットに接続せぇ、と思っていましたが、外部からの圧力がこういうかたちでくるとは考えてなかったです。苦笑い。
交通費について
データを見ると変わっていなくて、あれ!?って思いました。ていうか、むしろ上がっています。積極的に、人員の配置交換や、交通費のかからない(または安い)人を中心に雇用していたはずなのに、、、
細かい情報の開示はやめておきますが。要因としては、単に価格改定で交通費の単価があがっている、ということのほかに。掛け持ちや特殊な派遣が増えてて、以前は外れ値的な扱いであった交通費のかかる現場が増えたのかな・・・。中央値はそんなに変わってないので。
これは仕方ないというか、単にコスト面で解決できる話。管理会社にとってはあまり重要な話題ではないのですが、とはいえ、そういう面でも、管理員費用の増額要因にはなっています。結局はカネで解決するしかなくて、そしてそのカネの原資は管理組合に求めることになります。(なので、例えば管理員の雇用単価が変わらなくても、最終的に委託費としての管理組合への請求単価があがることになります)
応募件数について
これも細かい数字は開示しませんが。
まあ、減っているというか、「全然こないよ!」という程度には少ないです。
10年以上前は、「1物件に対して10人の応募があった」とか、そんな感じですが。
今は「募集してもすぐには来ない」が通常運転。
その間、代勤で対応したりしてるので、そういうコストもあげあげ。無理に行ってもらうせいで、交通費とか、いろいろ高いしね!
ただしそれで「強く困ってたわけではなかった」というのが個人的な実感で、それは前述の通り。「仕事があるならやりたい」管理員にとって、お給料が増えてうれしいという合致は確かにあったし。あとはそういう人をどれだけ効率的にかかえることができるか、という、業務量とか、雇用側の調整の問題だった。
管理員の品質について
これは感覚的なものですが。
「10人から選んでいた」時代よりも、今の品質のほうがよいです。(正確には、良い気がします、という感覚の部分の言葉ですが)
いまは人を選んでなくて、「応募があって、交通費が規定値以内で、会話ができて、身体的な懸念がない」であれば採用です。
面接官の目の問題、という揺らぎがあるのはそうとしても。それを差し引いても、現代の平均的なフロントの感性からして「ありえん」という管理員さんは、以前と比較して圧倒的に少ないです。
また、顧客のクレームや、フロントが管理員に求める能力、ってのも高くなってきているのはあって。総じて、単に時代的なものなのかなと思っています。現代人の平均的な品質が上がっているというか。
今の管理員さん、たばこ休憩とか、ないもの。(勤務中にタバコ吸うの禁止してるから。たまに歩きたばこして物件に到着する人いるけどあれって脳みそついてるのかなって思う)
おわり
管理員さんというお仕事は「長く同じマンションに務めることに価値がある」という、ちょっと特殊な面があります。
それが、時代の変化で「昔はそういうところに価値がありましたが」になるのか、そこは変わらないのか。
管理員の役割を分解すると
・清掃
・現地案内
・住人対応
と、大まかにそんな感じに分けられるのですが、このうち、清掃については、管理員が担う必然のある物件とそうでないところがあります。現地案内、住人対応も然りですが、これは清掃と比較して「同じ人が居ることの価値」は高い。
物件の環境によりますが、管理員の派遣は、1週間あたり0.5時間(戸)程度です。管理会社が管理組合に請求する費用は、1時間あたり2000円程度。
ということは、1戸当たりが負担する額は、1か月で5000円程度でしょうか。言い換えるなら、1日、200円程度。
この価格を「高い」とみるかどうか。
また、それを「完全にゼロ」にすることはできません。(対応が必要な役割はあるから、ゼロになったとしてもそのコストはほかの形で請求されるだけ)
となれば、本格的にガンバって削減して半額になったとしてすら1日100円程度「しか」変わんない、とも言えます。
その費用のためにクオリティを下げるよりは、コストをかけてでも通常の派遣を継続する、というのが妥当な考え方だろう、とは私は思いますが、、、どうでしょうね。
ちなみに。クオリティが下がらない削減というのもあるとは思いますが。管理会社には、それを積極的に行うインセンティブは薄いです。シンプルに管理会社の利益が減るからです。
むろん、だからといってそういう工夫とか効率化を、意識して無視するわけではないのですけれど、色々考えても、なんやかんやで「現場に社員がいる」というのは、管理会社にとって、とても「やりやすい」です。
管理会社が「やりやすい」ということは、余計なコストがかからないということですし、その結果、品質が良くなり、住民にとっても満足が得ることができる、ということでもあります。(フロントなり、技術員なりが物件に訪問するコストと、管理員が一時対応をするコストと、どちらが高いか。また、例えば警備会社にどの程度その機能を負担してもらうか、とか、そういう話です。「フロントが現場点検と同時にきめ細かな・・・」とかは10年前の、しかもセールストークの部類であるとご認識いただければ大丈夫です)
「具体的な知識や経験が求められるわけではなく、清掃や対応のスキルが高いわけではない」かつ「現地にいることに価値がある」管理員という役割をどうとらえるか、について。管理会社にとって、ウーンちょっとどうしようかなーって感じにこれからなりそうです。
まあ、これは管理組合にとっても「お金のない」組合が増えている中で、管理会社と目指す方向は一致しているので。たぶんこの方向自体はあってて、全体としてそっち向いてくのだろうとは思っています。