組合運営

マンション管理におけるファシリテーション【管理会社目線】

一般論として、ファシリーテーションスキルは団体を導くうえでとても大切な技能の一つと言われています。

とはいえ、日本ではあまり活用されていないのが現実かなーと思います。(じゃあ海外はどうなんだと言われると知らないのですけれど)

コンサル業をしている会社やIT分野では特に力を入れて導入しているのでは? と思いますが、我らがマンション管理業界は不動産業界に名を連ねているわけで、それがどういう業界なのかは皆さんご存知の通りです。

というわけで、これを取り入れている管理会社は少数(というか無い)のでは? という気がしています。まあ、他社のことは知らないのであまりエラソーには言えませんが。

さて、マンションの管理組合とは団体ですよね。

団体をより良く導く技能こそがファシリーテーションスキルですから、そういった仕組みを導入することで、マンションの問題が解決する例はたくさんあると思います。

なので、思うことを書いておきます。

本章はフロント(私)→他のフロント(特に新人)に向けた話の延長で書いています。

特定の管理組合がどのようなマンション活動をなすべきか、とは全く別の話ですから、そのあたりは切り分けてご理解ください。

チームを作る話

「ファシリテーション」は技術なので能力ではありません。とはいえ、「それって具体的に何?」という話は本旨ではないので、専門書等に委ねます。

本読んでください。

参加者を前向きにするスキルがファシリテーション

よくある理事会の不満

議長(または管理会社)が一方的に喋って物事が決まっていく、参加者が喋らない。住民は、普段は意見もなくほったらかしのくせに、問題があったときだけ運営の責任にして、自分の主義主張だけはやかましくがなりたてる。

程度問題ですが、どこの総会、理事会でもあることだと思います。

また、これで悩んでいる組合も少なくないと思います。

すべてが、とは言いませんが、これらは概ね、コミュニティ環境が整備されていないがために起こっている問題であって、根っこの部分ではそこをケアする仕組みが採用されていないことが課題なのだと私は思います。

なので、プロのコンサルが手を入れることで解決する可能性がそれなりに高いのではないか、と思います。

全員に当事者意識をもたせる、意見を吸い上げる、チームとして機能させる、というあたりは、まさにファシリテーターとしての本領ですからね。

ちなみに、このあたりを導入・整備するのが、マンション管理士に求められる専門分野じゃないの、と私は思います。試験で出題されるような法的な知識とかは(基礎知識としては必要ですが)実務面ではそれほど重要ではないのではないかと・・・。余談ですが。

ファシリテーターが機能する条件は「少なくとも全員が前向き」であること

この場合の「前向き」とは、必ずしも「協力的であること」を意味しません。

とにかく、「自分のマンションを良くしたい」という気持ちがあれば、多少の意見の行き違いはあって当然だろうと思います。また、お互いに常識レベルで話の通じるオトナであれば、最終的には話し合いで解決できるはずなので、特に大きな問題にはなりえません。

その意見のすり合わせを行うプロセスを提供することがファシリテーターでもありますしね。

問題は、「後ろ向き」な人の存在です。

例えば、どうしようもなく喧嘩腰に「理事会(または管理会社)が気に入らない」という方が稀にいます。

嫌いになるには理由があって、なにか、最初は小さなボタンの掛け違いがあったのではないかと思いますが、発展して「あいつが嫌い」という状態になってしまったら手の施しようがありません。やはり人間ですから、好き嫌い、合う合わないの相性問題もあるのでしょうが・・・。

私自身、実務の中で数人そういう方がいます。とにかく管理会社が嫌いで(私が感じたままで表現すると、嫌いというか「憎い」という感情)もう、本人にもどうしたらいいのかわかっていない、という状態です。

私の顔を見ると文句が始まって言いたい放題。少しでも反論があろうものなら嫌味をぶつける・・・という感じですね。周囲から見ると「極度に偏屈な人」という状態で、なんというか、日本語が通じず、正常な精神状態ではないのかなと。

最良は、その状態に辿り着く前にになんらかの着地点を見るけることですが、まあ、なってしまったものは仕方ないというか、そうなってしまったら周囲はどう扱ってよいのかもわからないというか・・・。

これはファシリテーションスキルとは別のアプローチからの解決が必要です。解決するなら、例えばご家族の方の協力を仰ぐとかそういう方向になると思いますが、仕事でそこまで一個人との関係性を深める必要があるかどうかは・・・。(私は管理会社の立場では不要だと思いますが、どうなんでしょうね)

解決策の一つとしては、基本無視、ということではないかと。少なくとも、私はガン無視するか正論で追い返してよけい嫌われています。

はじめちゃん!
はじめちゃん!
「テロリストとは交渉しない」と、私は常々思っています。

テロがどのような精神状態で行われるのかということを考えると少し気の毒に思うところもありますが・・・

マンション運営における主婦の役割

「主婦」というのは、区分所有者ではない方の代表として、特に「マンション関連分野の専門技能を持たない住人」をデフォルメした記号として使用しています。

別段、主婦の能力値が相対的に見劣りするという意味ではないのですが、まあ、ここはこれが通じやすいと思うのでこれで通します。不愉快に思われた方はゴメンナサイ。

少し話は変わりますが、「働きアリの法則」をご存知ですか? 「組織全体の2割程度が中核を担う」というもので、パレートの法則とか言われるやつです。

マンション運営も(細かい割合は別として)同じ様な現象は確実にあります。つまり、運営の中核を担う中心人物はごく少数で、残りの人達はその人達にくっついていくような運営が行われている、というものです。

それはそれで良いと私は思います。みんなそれぞれにお仕事とか家庭もありますし、また、現実的には「中核の人数」が増えれば増えるだけ運営面の難易度が増しますから、意欲のある少数の人達が中心となって運営を行うのは全体にとって利益があります。

ここでの課題は、運営の中枢には参加しないが、重要かつ貴重な意見を持った主婦層(たち)を、どのようにマンション運営に組み込むか、ということにあります。

マンション運営に注力するような人たちは、結構、アタマデカッチな方が多いように思います。それはそれでパワフルな運営ができますから良い部分も多いのですが、しかし、「小さな希望や、表に出てこない価値観」が見過ごされて、結果として「主婦層の運営への貢献度」を下げている一因となっているのではないか、と思います。

ムヅカシイこと言っててよくわかんないし、勇気出して言ってみたけど聞いてくれないし、なんだったら怒られて怖いし黙ってよう、的な。

実は、住民の満足度というのはそういう小さなことの積み重ねであったりしますし、また、そもそも論として「運営に参加している」という行為自体が自分のマンションに対する愛着を呼び、(結果として何も変わっていなかったとしても)満足に直結しているケースも多々あるだろうと思います。

ですから、住民の意見を吸い上げる仕組みは、方法論は別としてもあったほうが、全体の満足度・幸福度の高い運営ができます。(ほとんどのマンションは、この手の仕組みは全くのゼロで、何もしていないのではないかと思います。この分野は管理会社がめちゃくちゃ苦手ですからね)

実際に何をすれば、というのは、当該マンションの規模や過去の経緯によってかわるでしょうから私からはなんとも言えませんが、その手の運営スキルを提供する機能はファシリテーターの本領です。まあ、大切なことは雰囲気と仕組み作りでしょうね。

会議で気をつけたいこと

「顕在的な問題」と「潜在的な問題」がある

雑にですが、図にしました。

マンションのお仕事はこれだけではないです。パッと作ったので、細かいとこはあまり深く考えてません。そのへんは、読んだ方が頭の中でいい感じに補完してください。

ここでのポイントは、ファシリテーションスキルが求められるのは、「潜在的な問題に対してのみ」ということです。(図中の黄色の領域「だけに」発揮される)

はじめちゃん!
はじめちゃん!
ここでは顕在的、潜在的、という分け方をしていますが、雰囲気で察してください。なんだかしっくりくる表現がなくて・・・。緊急性の有無、及び、重要性の高低、というニュアンスも含んでいると理解していただいてもいいと思います。

建て替えは「そのうち考えないといけないけけど、いますぐ解決しなくても大丈夫な問題」の代表例だと思います。(潜在的かつ緊急性が低く、重要度の高い問題)

特にこういった課題の解決に、ファシリテーションが多いに役立ちます。

逆に、顕在的な問題(紫の領域)については、あまりファシリテーションは役立ちません。

これらの問題は、あまり複雑ではないというか、データからある程度、客観的な正解は導き出せるわけなので、そんなに悩む必要がないというか・・・。

「顕在的な問題」には、管理会社が答えを示せば良いものが多い ※と、私は思う

管理会社が受託している定型的な業務については、判断力を要する部分は少ないです。

「業務の難易度が低い」という話をしているわけではなく、合理的な思考を持ってあたれば自ずと答えは限られるので、誰がやっても答えはそんなに変わらない、という話です。

ですから、顕在化している問題については、管理会社、管理組合双方が協力し、組合の中枢を担うごく少数の理事で決定、解決すれば良いでしょう。ここに、ファシリテーション的な技能はそんなに必要ではなく、論理的思考だけで解決可能なはずです。

ちなみに、大規模修繕工事も、世の中で行われているのは「ただの外壁塗装工事」ですから、金額が大きいだけで、工事内容を細分化していくとそれほど悩む部分は多くないと(私は)思います。

はじめちゃん!
はじめちゃん!
大規模修繕工事の基本理念は「外壁を塗るために足場をかけるので、ついでにやれることはやろう」というあたりに設定されることが多いです。そのくらいなら、特段に合意形成の難易度が高いなどの高度な問題があるとは、あんまり思わないかなーと。手順の客観的妥当性が問題になる程度でしょう。

タワーマンションなど、超大規模マンションになるとまた感覚も違ってくるのかなあという気はしないこともないですが・・・

【方針の抽象化】組織は「ゴールの共有」が大事!「グループの目指す先」を明確にしよう

さて、多くのマンションは、事後対応型の業務が基本になります。

すなわち、「壊れたから直す」「クレームが出たから注意する」という具合です。

それが悪いとは思わないですが、より高度なミッションに応対する場合には、いろいろと不具合がでてきます。

その最たる例が建て替えですね。

うちの近くにも、「建て替える派」と、「使う派」が喧嘩してにっちもさっちもいかないままそろそろ20年ほど経過するマンションがあります。自主管理なので詳しい内部事情まではよく知らないのですが、住民は「室内リフォームもしたいけど、いつまで使うかわからないしねえ」とか言ってて、なかなかつらそうでした。(それが原因で出ていった人も多数いると聞いています)

なぜこういった問題がおこるのか、といえば、一つには「マンションとしてのビジョンがないから」ではないかと思います。

総意として「いつまでこのマンションを使うのか」というゴールを共有して、目指す先を明確にしておかないと、建て替えるかどうかみたいな合意形成の難易度の高い案件なんてどっちにも決まらないよなー、と。運営の準備不足、手順がちょっと良くなかったのかなあ、という気がします。

これ、会議(総会や理事会)も同じです。

「今日の会議は○○のためにします」ということを、参加者全員が言えますか?

建て替えの話し合いであれば、その会議は「進捗説明のため」に集まっているのか「意見交換」のために集まっているのか「意思決定」のために集まっているのか。

そこんとこが全員で共有できていなければ、まあだいたいピントのズレた会議になって割と全員が不幸な感じです。

管理会社のこと

新人のフロント様へ

さて、とまあ色々書いてきましたが、ここで紹介したことの殆どは実務で使いません。

あえてそれらを使う理由がないですし、機会もないからです。

ですから、新人の方に特にお伝えしたいのは、まずは管理業務主任者試験の内容を把握することで、基礎的な体力をガッチリ作ることを優先させたほうが幸せになれると思うよ、ということです。

何度も言いますがこの手のスキルはただの技術ですから、後天的に習得が可能です。かつ、(現時点では)会社にも管理組合にも能動的に求められているものではありませんから、これらの習得が評価されるかどうかには一定の運要素があります。

まず大切なことは、「マンション運営の基礎知識を固める」ことの一点で、この手の追加スキルは、落ち着いてから考えてみたらどうでしょう、と、私なんかは思います。

マンション管理会社と理事会の距離感は、「見えない壁が見える」距離からのスタート

これはただ言いたかっただけなんでタイトルだけにしておきます。

管理会社として、組合運営にどう関わるべきか?

管理会社が、コンサル業としてどこまで介入すべきか、ですが、これは「管理会社のミッションとは」に通じる話です。

会社ごとにいろいろな考え方はあるでしょうし、経営者は何かとそれぞれの気持ちもあるのだろうとは思いますが、「管理会社は受託する契約書以上のことはできないし、しない」が基本原則だと私は思っています。

つまり、現状維持が基本姿勢です。

理由は様々です、単に、そんなにたくさんお金もらってないこととか、その契約をしていないこととか、教育体制が整ってなくて技能が不足しているとか、まあ、いろいろです。

別段、現場の人間が「管理会社は管理組合の運営に責任を持たぬ、責任なすりつけてくるな」という気持ちで接しているわけではありませんが、管理会社が、方針として組合の運営改革に着手している、という話を(私は)聞いたことがありません。そうである以上、現場はできないし、しないのは当然の話です。

そういうわけで、管理会社は原則的に現状維持が主旨となるのは、これはやっぱり致し方ないことなのかなあと、私は思います。(良い悪いではなくて)

はじめちゃん!
はじめちゃん!
組合運営の改革を標榜している会社ならきっとあると思いますが、じゃあ具体化まで落とし込めてるの?については一様に口をつぐむでしょう。例えば教育体制の設計と評価制度の新設もセットにしないと実行力がなくて、抽象化された方針にはあんまり意味がないわけです

 

この分野、マンション管理士がお仕事として台頭するのか、管理会社がコンサルトして機能を持つのか、もしくはこのままなのか。

将来的には、(それの良し悪しは別としても)管理会社がそのパイを総取りするのも戦略としてはありだと思いますが、まあ、ビジネスモデルの問題でそういう強制力は働かないですし、難しいのかなあという気がしたりしなかったり。

単純に、マンション運営の委託を受ける管理会社がコンサル業も受けちゃって、それって利益相反にならないの? というのもありますし。

社会環境に目をやると、昭和56年以前(約40年前)のマンションは100万戸ほどあるらしいですし、それらも近い将来、本格的ににコレどうするの?? を考えないといけない時期がくるわけで、特に建て替えという究極的な命題で揺れるマンションとか、悪ければ、シャレじゃなく荒れ荒れになるマンションはあるのではないかなあと。(住人の高齢化も結構な問題です、住人の8割以上が60歳超えてるとか、普通にありますから・・・)

まあ、私としては人の手で解決するというより、手っ取り早くなんかスゴイ技術革新での解決に期待したいところです。(マルナゲー)

ABOUT ME
はじめちゃん!
はじめちゃん!
分譲マンションを管理する会社に勤めています。 資格:管理業務主任者/マンション管理士/宅地建物取引主任士/マンション維持修繕技術者/二級電気工事士/2級建設業経理士/二級建築士/1級船舶免許

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